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 殴られた拍子に倒れてしまった身体を起こそうと、愛伊の言葉を受け流していたら、「がっはぁ……! ぅっ」という悲鳴が聞こえた。

 え? と思って顔を上げたら、そこには愛伊に向かって拳を振り上げる青の姿。

 そして、そんな青を止めようと愛伊との間に割って入るけど、この間のように返り討ちにあっている取りまき連中。

「許さない、許さない、許さない……っ、許さない!」

 がっがっ、と地面に倒れた取りまきたちと愛伊を蹴りつける音が辺りに響き、俺ははっとしながら急いでその場を置きあがった。もちろん青を止めるために。

「青、俺なら大丈夫だから、な?」

「ぅ、ぅ……あ、ぁ、ふかみぃ、ふかみ」

「ん。大丈夫だから。……ほら、汚れちゃってんじゃん。こいつら殴って、わざわざ汚れなくてもいいからさ」

 俺の言葉になぜか目を見開きながらも希望に満ちた目を向けてくる愛伊。

 なに、もしかして俺が青を止めたのが自分のためだとか思ってるとか? ありえないっしょ。

 俺が青を止めたのは、単に青にこれ以上お前らの血がつくのがいやだっただけ。それに、殴ったら痛いじゃん、青の手が。

 あいつらを殴って、真っ赤になった手のこうを俺の手で覆う。

 そうしたら青のほうも覆い返してきた。可愛いなあ。

「さぁ、青、帰ろうか。汚れちゃったし、シャワー浴びないとな! 俺の部屋行こうぜ」

「っうん! 行くー」

 生憎、意味もなく殴ってくるような相手を、しかも大事な子を言葉で傷つけようとする相手を気遣うような心は持ってないからさ。

 俺は、「ま、って……!」と痛むだろう腹を抑えてる愛伊ににっこりと笑った。

「はは、そのうち誰か通って助けてくれるんじゃね? だって、お前は誰からも愛される存在なんだろ? じゃぁな」

 青の手を引っ張りながらそう言ったんだけど、そんな迎えなんて来ないだろうなぁ。

 ここ、多分青の縄張りだからっ、って人が来ないだろうし。……いや、ほんとはあんまり使いたくなかったんだけど、迎えを呼んであげようかな。愛伊限定で。

 まあ、迎えって言っても、迎えられたら最後、もう表には出てこれない迎えだけどな。早速家に電話して、根回ししてもらわねえと!

 生徒会役員と不良は、そうだなぁ……あいつらは別に青に対してなにもしてないから正直どうでもいいんだけど、愛伊が来てからの行動のせいで、もう跡継ぎではいられなくなるだろう。

 仕事は放棄したり、守るべき生徒に暴力をふるったりしたら、まあ当然の処置だと思う。

 今まで上に立つだけだったやつらが、その地位を失うんだ。それってきっと、なににも耐えがたい地獄だろうな。自業自得だけど。

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