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「――あっ、深海、危ないっ!」

「……? 危ないって、なにが?」

「えっ? だ、だって……っ、な、なんで!?」

 危険を叫ばれたって、意味がわかんないんだけど。

 俺は目をぱちくりさせながらも、青を一旦身体から離す。

 首を傾げながら愛伊を見れば、その顔は困惑と、あと嫉妬に染まっていた。

 多分、自分には懐かない青が俺の傍で嬉しそうに俺のこと見てるからだと思う。自分では顔で判断しないとか言いながら、愛伊って絶対美形好きだから。

「どうして! どうして僕にはひどいことするのに、深海にはそんな顔するのっ!? あ、もしかしてこれがダメなの!?」

「……わお」

「ほら! 可愛いでしょ!? こんなに可愛い僕は愛されて当然なの! これならもう、ひどいことできないよねっ、青も、素直に自分のことさらけ出して! 深海じゃなくて、僕が受け止めてあげるからっ」

 え、可愛いって……えーっと、一体どこが?

 自信満々な愛伊には言っちゃ悪いけど、別に可愛いとか思わない。

 だって、この程度の顔なら、この学園、いくらでもいるよ? っていうか、学園の容姿レベル高いから、学園を基準にすると、正直あれだよね……中の下くらい。あるいは下の上?
 
 それなのにもかかわらず、愛伊は上目遣いで見てくる。

 一体なにを言ってほしいわけ? まさか、「はは、そうだな、可愛い愛伊は愛されて当然だな」とでも言ってほしいのか?

 ……ごめん、無理だ。だって俺、思ってないこと言えねえもん。

 しかも、そんな別に整ってるわけじゃなくて、可愛いわけでもない愛伊に対して、生徒会たち取りまきは、「愛伊、可愛い顔曝すなって言ってんだろうがっ、ライバルが……っ」とか、「いつ見ても美しいですね」とか言ってる。あはは、こいつら多分目え悪いんだろうな! でも、会長、俺はライバルなんてできないと思うぞ。

 目をぱちくりさせる俺と、なに言ってんだこいつ、みたいな目で愛伊を睨みつけながら、「深海のほうが可愛いー」なんて言う青。

 青、それもどうかと思う。俺は自分で言うのもなんだけど可愛い系じゃなくてかっこいい系だ。

 しかしそこで、予想外な事態が起こった。

 というか、予想外な衝撃が、俺の頬に走った。……って、なんで俺が殴られてんのさ。

「なんでこんなに可愛い僕のことより、深海のほうが可愛いなんて言うの!? 深海が青になにか言ったんでしょ! いくら青が素直に自分の気持ちが言えないからって、自分の気持ち押しつけちゃだめなんだよ!?」

 いきなり殴られて、そんなことを言われたらもうぽかーんってするしかないと思う。

 結構な力で殴られたのか、じんじんと痛む頬に俺は手を添えた。……あー、最悪だ。鉄の味がする。

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