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うーん、あれかな、愛伊には学習能力っていうのがもしかして欠落してんのか?
俺が呆れても仕方ないくらいに、あいつは青に絡んでいく。あー、もう、青がいやがってんのに、なんで気づかないのかな。
しかも、その度に青を怒らせた揚句ぼこられて帰ってくるくせに、この間なんて言ったと思う?
自信満々な顔で、「きっと青だっていつかわかってくれるはずだもん! いくら寂しいからって、こんなことしちゃだめだってっ、おかしいって!」だってさ。どうしたらそう思えるのか、そっちのほうが不思議。
あ、もしかして、愛伊ってば自分が誰からも愛される存在で、自分のことを嫌いになる人間なんてどこにもいないって思ってる、とか? あはは、あの子ならありそうだな!
ま、俺も別に愛伊のこと嫌いじゃないけど。
だって、正直どうでもよかったんだもん。
……でもさぁ、大事な子を傷つけられて黙っていられるほど俺は寛容じゃあないんだよ。
だからね、正直俺個人で君に恨みはないんだけど……覚悟して。
「――ね!? 深海だって、そう思うでしょ!? 青はもっと素直にならなきゃだめだよっ」
朝、教室に来た途端に、「深海も来て!」と言われ不良ともども連れ出された俺。
一体朝からなんなんだ。
しかも途中で生徒会たちも合流して、「またてめえも一緒なのか」という邪険にするオーラを全身に浴びてしまった。俺は別に好きでいるわけじゃないのに。
取り合いならどこか別のところですればいいのに、と思っていたけどそのまま愛伊に引っ張られ、たどり着いたのはあの中庭。
……そしてそこにはやっぱり青がいた。ここは青のさぼり場らしい。
実はあの花壇の花も、園芸部じゃなくて青が植えていたみたい。
あの後、ぐちゃぐちゃにしちゃったことで泣きそうになっていた青を慰めて、二人で植え直した記憶は新しい。
「あ! 青、やっぱりここにいたんだねっ、僕のこと待っててくれたんでしょ! わかってるからっ」
「……違うに決まってるでしょー。俺のことを勝手に決めないでよ」
「もうっ、青は素直じゃないんだから! そんなんじゃ僕以外にわかってくれる人、いないよ!?」
「……いるよー。俺のことわかってくれる人。お前なんかよりずぅっと、俺のこと考えてくれる人」
愛伊の言葉に不快感をあらわにして睨みつける青と、その感情に気づかず、「わかってる!」と声を上げる愛伊。
ほんと、なにをわかったなんて言ってんのかな、こいつは。
ふと青から視線を感じて、目が合った俺は、にこりと笑いかける。
自意識過剰じゃないけど、青のことわかってる人間って、絶対に俺だからさ。嬉しいじゃん、そうやって言ってもらえると。
そうすると近くにいた愛伊なんて目に入ってないみたいに青が駆け寄ってきて、そのまま俺に覆いかぶさった。
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