よかったー。正直俺がどっちかになんねえといけない? って思ってたから一安心。

 青も、「俺も、SでもMでもないから、知られたら失望されるって思ってたー」と呟いている。……っていうか、青、口調が少しさっきと違うな。

 正直に問いかけたら、青から返ってきたのはしょんぼりしながらの回答。

「俺、たまにわけわかんなくなる。頭の中が真っ白になって、どうしていいかわからなくなるんだぁ。思ったことが、全部口から出て、でも、どうしていいかわかんなくてぇ、それで……」

「うんうん。とりあえずそんなしょんぼりしなくていいからな。別に、それくらいでお前のこといやになったり、ましてや嫌ったりなんてしねえからさ!」

 あー、もうなんでこいつこんなに可愛いのかな。

 自分の感情のコントロールができないことを理解して、それを俺がどう思うのか怖いのかちらちらと見てくる青に、いとしさは募るばかり。

 俺が身体を少しだけ離して、少し高い位置にある頭を撫でながら言ってやると、一瞬きょとんとした青は、次の瞬間には心の底から嬉しい! みたいな顔で俺のことを抱きこんできた。……俺も、こんなふうにしたかったなぁ。

「……俺、自分が普通じゃないって、わかってるけど、深海も違うからおそろいで、嬉しいー」

「ん? なに言ってんだよ。お前は別に普通だろ? ただ、他の人とは感情表現が違うだけでさ。俺も普通だし」

 なに言ってるのかなこの子は。と口に出すと、きょとんとする青。

 ……初めて狗牙や、剣と会った時と同じような反応するなよ。まあ、あいつらは、きょとんってしたんじゃなくて、変なモノでも見るような目で見てたけどな。

 狗牙に至っては、「なんだこいつ、ちょっとおかしいんじゃねえの」なんて言って、道にお仕置きされて喜んでた。

「深海は、俺のこと、おかしいって思わないのー?」

「? なにをおかしいって思うんだよ。お前に変なところなんてねえだろ」

 恐る恐るというふうに聞いてくる青に、思わずほおがゆるむ。

 でも、なんでそんなことを恐る恐る聞くんだ?

 ただ普通に自分の思ってることを口に出しただけなのに、青は呆然と俺のことを見てくる。なんだ、ほんとに一体どうしたんだ?

 あー、なんかこういうのよくあるなぁ。俺が話すと相手が異物を見るみたいに見つめてくること。まあ、青のは別にそういう負の感情じゃないんだけど。

 うーん、と思い返しながらも、呆然としている青を見ていた俺だけど、青の顔が徐々に蒸気したみたいに薄っすらと赤く染まっていく。

 ん? いきなり嬉しそう。ほんとになんなんだ。

 青の感情の動きは、大体読み取れるけど、言葉を発してくれないと、その感情の詳細まではさすがにわかんない。わかったらエスパーだな。

「――っあは、深海ぃ、大好きー」

「ん、ああ。俺も好きだ。俺たち相思相愛だな!」

「っ、うん!」

 突然甘えるように首筋に頭をぐりぐりし始めた青。ほんと可愛すぎるでしょ、これ。

 俺も、青がこの世界で一番好きで、大事だよーって思いを込めて、頭を撫でた。だって、青は俺の大事な大事なイヌだからな!

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