「ぅぅ、ぅ、やだやだ、あいつ、違う……っ、俺、あの人が、おそろいって、言ってくれた、のにぃ……! 嫌いっ、嫌い、嫌い……っ」

 暴れる青に近づいて、隙を見て背中におぶさった。

 いきなりの刺激に驚いて暴れる青を、ぎゅうっと強く抱きしめる。そして、「やだやだっ」と叫ぶ青の耳元で囁いた。

 その声が、思った以上に甘くなったのは、きっとこの子が俺の大事なイヌだから。

「――大丈夫。大丈夫だよ。……ほら、いい子だから、深呼吸しな?」

「ぅ、ぅ……な、にっ」

「よしよし。お前が大事にしてるもの、バカにされたみたいで悔しかったんだよな。悲しかったんだよな。……大丈夫。お前の瞳は、トラウマなんかじゃない。お前と俺をつなぐ、誇らしいもの、だろ?」

 青は、俺がおそろいだって言ったその瞳の色を、きっと誇りに思っていてくれたんだと思う。

 でも、その瞳の色を、愛伊はトラウマだと勘違いした。

 それが悔しくて、誇りに思ってたものをけなされて悲しくて、でもその感情をどうしていいのかわからなくて、結局暴れることしかできなくて。

 そんな不器用な感情表現しかできないこの子が、いとおしくて仕方がないのは、俺だけなんだろうか。

「え……? あ、あ……! ご主人、さま……?」

「ん。まあそうなんだけど、ご主人様はちょっといやだなぁ。俺って、そんなふうに呼ばれて喜ぶSじゃないし。深海って呼んで?」

「ふかみ……」

「はは、うん。なんか、お前の目の色とおそろいみたいな名前だろ。な? 青」

 にっこりと笑いながら後ろからだきついていた青の身体を回転させる。

 ……うーん、体格差のせいか、こう……包みこむみたいな抱き方がしてあげられないのが悔しいな! 青ってば、体格いいから。

 俺も鍛えてるんだけどなぁ。……筋肉はあんまりつかないけど、それがまた悔しい。

 そんなことを考えながらも目を合わせ、ほほ笑みかける。
 呆然と立っている青に笑いながらも、青の耳たぶが見やすいように髪の毛を耳にかけた。

「……これ、大事につけてくれてたんだな、お前も。……ほら、俺も、おそろいな」

「! ぅ、ぁ……ふ、かみっ、深海、深海……!」

 ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる青の背中に俺からも手を回す。

 そのまま青が落ち着くまで背中を撫でていたんだけど、青が顔を埋めてる肩が濡れる感覚。泣いてるのか。

 それがわかってさらにいとおしくなったのは言うまでもない。

「うー、深海ぃ、俺、会いたかった」

「うん、俺も。……あーそうだ。俺、SでもMでもねえんだ。期待してたらごめんな?」

「……そう、なのー? 俺も、違うよぉ」

 あ、そうなんだ。ぱちくりと目を瞬かせたあと、嬉しそうに破顔する青に、俺もにっこりと笑う。

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