「そんなひどいこと言ったらダメなんだよ!? いくらあなたがつらい目にあってきたとしても、そういうこと言ったら、友達できないよっ。あ! もしかして、その目の色でなにか言われたんでしょ! 大丈夫だよっ、僕がその目も受け入れて上げるから!」

 愛伊が叫んだその言葉。その言葉を言った瞬間、男の周りがピシリと凍った。

 ……どうして愛伊は、男の人の目のことを言ったりしたんだろう? もしかして、愛伊自身が男の人の目の色をおかしいなんて思ってるんじゃないか?

 あんなに綺麗な色は、カラコンで出すことなんてきっとできない。

 透き通るような青で、澄み渡っているのに、奥までは見えない深く暗い青。

 ……そんな綺麗な瞳は、愛伊の言った言葉に、暗く濁った気がした。


「――いうな」

「え!? なにっ!?」

「あの人がおそろいだって言ってくれた色を悪く言うな! お前嫌いっ」

「がっ、は……ぅ、な、なんで……っ?」

 嫌い、嫌い……! と叫びながら、必死の形相で倒れた愛伊に蹴りを入れ続ける男。

 俺はそれを止めることもできず、男の言葉に呆然とするしかなかった。


 ――へえ。俺のイヌって、青い目なんだな。……んー、じゃあ、この青いピアス渡して? ほら、俺の名前も青っぽいから、おそろいってことで。

 イヌになにかを贈ろうってなった時、ピアスにしようと店まで来たけど、結局色が決まらず悩んでいたら、一緒に来てくれてた執事長がこっそりと教えてくれたんだ。

 あなたのイヌの目の色は青ですよって。

 それで、なんだか俺の名前ともおそろいな気がしたから、じゃあそれって決めて、イヌに送った青いピアス。
 片方は俺の耳に今もつけられてるピアス。

 そこまで考えて、はっとしながら、男を見た。

「――嫌いっ、離せ! 離せぇっ……嫌いぃっ」

 さっきまで愛伊を蹴り続け、それを止めようとしていた生徒会と不良を殴り続けていた男は、誰かが知らせたのかやってきた風紀委員に取り押さえられていた。

 彼が俺のイヌかもしれないという高揚感と、いやがってるんだから、離してやれと思い、思わず声をかけようとした時、暴れる彼の髪が乱れ、耳で光る青いピアスが目に映った。

 ――やっぱり、この子が俺の……。

 そう思いながらも俺は、彼の瞳の暗さが気になり、その場を動けなかった。

 そのうちその子は風紀委員に連れていかれてしまい、俺は愛伊たちのうめき声が聞こえる中呆然と立ちつくしていた。

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