道なんかは、「……相変わらず素でひどいこと言うね、お前。しかも無自覚だから手に負えないし」とでも言いそうなことを考えながらも、俺は表情を崩さなかった。

 どうでもいいと思いながらも、「はは、そうか。ありがとうな!」と言った。

 それに対して愛伊は満足そうに笑っていたんだけど、やっぱり表情はよくわかんない。

 なんであんなわかりやすい鬘被ってるんだろうな。

 俺の愛伊への感想は、大体そんな感じだったんだけど、この学園の、生徒会を筆頭とする人気者たちは違ってたらしい。

 最初に、愛伊を連れてやってきた食堂では、まず副会長が、「愛伊! 会いたかったですっ」とかなんとか言いながら、愛伊のところまでやってきて、その後ろに他の生徒会の人たちもぞろぞろとついてきていた。

 しかも、愛伊と話して、愛伊のことを気に入っちゃったんだよなぁ。まったく意味がわからん。

 会長なんてさ、愛伊に、「へぇ、これがお前の気に入ったやつか? ふん、ヲタクじゃねえか」って言って、愛伊ってばそんな会長を、「みっ、見た目で判断するなんて、最低ですっ」なんて言いながら殴っちゃって。

 初対面を見た目で判断するのは当然だと思うんだけどな、俺。もしかして、愛伊ってば初対面の人の内面までわかるエスパーだったのか?

 しかも、殴られてるのにも関らず、「その強気な態度、気に入った。俺のものになれ」だよ? あはは、意味わかんないよな! 会長ってば、ドMなのかなぁ。羽衣みたいな!

 なーんて、羽衣は可愛いいけど、会長がMって言われても、正直全然可愛くない。

 羽衣のイヌである剣に言ったら、「俺の羽衣とそんなクズを一緒にするな」とか怒られそう。

 まあ、そんな感じで他の生徒会役員たちも虜にした愛伊なんだけど、その生徒会と人気を二分してる風紀委員の人たちは取りまきにできなかったみたい。残念だな。

 いつも、愛伊に会うたびに眉間のしわが濃くなる風紀委員長を思い出し、俺は内心笑う。

 今普通に笑っちゃったら、愛伊になに言われるかわかんねえもん。

 生徒会と一匹狼の不良が愛伊を取り合っているのを横で聞きながら、そんなことを考えていた俺だけど、周り以外の人間が静まりかえっているのがわかった。

 周りっていうか、生徒会と不良と、愛伊だけなんだけどな、しゃべってるの。

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