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俺、柏木深海の家は、少し……いや、少しじゃないか。かなり特殊だと思う。
まあ、客観的に見たら、だけどな。なにが特殊かって、俺の家では5歳になると“イヌ”を持つことになるんだ。
まあ“イヌ”って言っても、人間なんだから、そう呼ぶことに正直俺は抵抗があるんだけど。……いとこの道なんかは、普通に言いそうだ。
笑顔のまま、「僕にイヌの分際で逆らうの? いじめられたいわけ?」とか。
そんな道も、最近やっとイヌと対面を果たしたらしい。
というのも、俺たち柏木家の人間は、与えられたイヌに高校生になるまで会うことができない。高校生になったとしても、ただ同じところに入学させられて、ヒントをもとに探さないといけないんだ。ほんと、大変だよな。
その試練を乗り越えた先に、本当の絆が生まれる……とかなんとか言われたんだけど、正直それって間違いじゃないか?
だって、イヌと一緒に毎日過ごしてたほうが絶対絆は生まれるし、仲よくなれる。
まあ、先人たちの話はこの際おいといて。
そのイヌというしきたりがあるっていうだけじゃないんだ。柏木家が普通じゃないっていうのは。
柏木家ってさ、ドSが生まれる家系なんだ。道みたいな。
たまに、もう一人のいとこである羽衣みたいに、Mっ気があるやつも生まれるみたいなんだけど。
そして、なぜかイヌになるのは、そんな飼い主になる柏木家の人間とは逆の性癖を持つ人間。
現に、道のイヌはドMで、羽衣のイヌはドSなんだ。
まあ、あいつらが幸せならそれでいいんだけどな! 相性がよくていいし。
でもさぁ、正直、俺はSでもMでもないんだよなぁ、これが。性格だって自分で言うのもなんだけど普通だし。
これを道に言うと道に、「お前は普通じゃない。普通のやつなら、僕が狗牙を可愛がってる時に、仲良しだな! なんて言ったりしないから」なんて言われるんだけど。
でも、狗牙だって嬉しそうだったし、道も楽しそうだったから。ああ、二人は仲がいいんだなぁ、って思ったんだけど。
だって、あれは道と狗牙の愛情表現だろうし。俺が言ったのは当然のことだろ?
そう二人の光景を思い出しながらも、自分のイヌを思い、罪悪感が胸をよぎる。
だって、俺は普通で、SでもMでもないんだ。
俺がどちらかの性癖を持って生まれることを望んでいるかもしれないイヌを満足させることなんて、できない。ごめんな、まだ会ったことないけど。
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