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数分かもしれないし、数時間かもしれない暴行が終わり、まるで始めからなにもなかったように彼らが出ていった生徒会室で、しばらく痛みに身体を動かすことができず、痛めつけられたままの恰好で仰向けに寝そべっていた俺。
俺に傷をつけたのが、相馬先輩ならきっと痛みも違うものに感じているはずなのに。
こぼれおちる涙をぬぐいながら、ゆっくりと立ち上がり、壁伝いに手をつきながら生徒会室から出て自室へと戻ろうと廊下を歩く。
しばらく時間をおいたからか、痛みは少し軽くなってるけど、それでもやっぱり痛い。
「っ、ふぅっ……ぁ、ぇっぅ」
ぐずぐずと止められない涙を流しながらも歩いていた俺だったけど、後ろから急に肩を掴まれて、痛みに声を上げながらも振り返った。
そこにいたのは……険しい顔をした相馬先輩だった。
「ぁっ、そ、ま、先輩……」
「羽衣っ……どうしたんだ!」
「ぅぇ、あ、いや、あの……」
どう説明すればいいのかわからず、おろおろと視線を泳がせる。
そんな俺に、「来い」と強い口調で言った先輩は、そのまま俺の手を強く握った。
「いっ、ぁ……っ」
あの時有村くんに握られたのよりはるかに強い力で握られて、あまりの痛みに先輩が来た時に止まったはずの涙が流れた。
それになぜか満足そうに笑うと、相馬先輩は俺を肩にかついで、歩き出す。
先輩が歩く度に傷に響いて、すごく痛い。
……でも、先輩が俺に痛みを与えてる原因だと思うと、痛みさえどこか甘いもののように感じた。
「ぅっ、ぁっ……せんぱっ」
「いい子だから、黙ってろ」
「ぁっ」
いつも以上に強い言葉で言われ、びくりと身体を震わせる。
言われた通り黙ってると、「いい子だ」と甘やかすような口調で言われ、もうなにがなんだかわからなくなった。
相馬先輩は、そのまま歩き続け、ついたのは相馬先輩の部屋だった。
「ぅっ、わ……!」
「――なぁ、羽衣」
ずんずんと部屋の中を進んでいき、寝室に入った先輩に、そのままベッドの上に放り投げられてしまう。
ベッドで弾んだ瞬間、腹筋に力を入れてしまい、蹴られたり殴られたりしたお腹がずくりと痛んだ。
痛みでまた動くことができなくなってしまった俺の上に、突然跨ってきた先輩は、冷たい口調で俺の名前を呼ぶ。
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