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……子供のころから、ずっと先輩のことを望んでたんだから。
俺は相馬先輩の声が聞けたことでふわふわした気持ちでいたんだけど……。
「おい! 俺のこと無視するなんて最低だ!」
「……ちっ」
有村くんがすごく怒った顔で怒鳴ってきて、俺は目に見えてびくつく。
……びくつきながらも、相馬先輩が俺に怒鳴ることを想像してドキドキと胸を高鳴らせて顔を赤くする俺って最低。
あれ? 相馬先輩ってば、なんでまた一気に機嫌が悪くなったんだろう?
一気に急降下した先輩に疑問を持ちながらも、有村くんが怒ってるのは無理もないことだと思うし、正直に、「ごめんねー」と謝った。俺が勝手にふわふわしてたのが悪いんだもんね。
そうすると有村くんは、「わかったなら許してやる!」とにっこりと笑ってくれた。
「羽衣は謝ったんだから、剣も謝れよ!」
「あ? ふざけんな。てめえみてぇなクズに謝る必要なんて、どこにもねえだろうが」
「だから、ひどいこと言うなって言ってるだろ! 最低だっ。……あ! もしかして、照れてんのか!? ほんと、剣は俺がいないとだめだなぁ!」
怒り顔を治めて、にっこりと自信満々に言い放った有村くんに、気分を害したように、舌打ちをした相馬先輩は、ぎろりと最後に有村くんを一睨みした後、その場を去っていった。
その際に、俺にはやさしい視線をくれたから、俺はドキドキ。
うん、先輩にもらえるならやさしくてもひどくても、なんでもいい。
ときめきに心を躍らせる俺とは反対に、その睨みを受けた、有村くんが怒るのは、当然のことで……。
「なんだよっ! 剣のやつ、俺が謝ったら許してやるって言ってるのに!」
「あ、有村くん……」
「秋って呼べって言ってるだろ! 最低だっ」
「っ、ご、ごめんね」
そうだった、名前で呼べって言われてたんだった。
有村くんの怒りを感じながら、相馬先輩も俺のことこんなふうに怒ってくれないかな……と思ってる俺は無視して、急いで謝る。こんなんだから、相馬先輩にも言えないのに。
俺は謝ったことで、また機嫌がよくなってる有村くんとは逆に、俺は自分の性癖と相馬先輩のことを考えてまた少し落ち込んでしまった。
……やっぱり、先輩の近くによるには、俺がドSになるしかないのかなぁ。
よぉし! いとこに相談してみよう!
俺は心の中でガッツポーズをすると、俺の手を強く引いて歩き始めた有村くんに引きずられるように歩く。
「……っ、いっ」
「早くこいよ!」
握られた腕がすごく痛くて、思わず涙目になった俺。
……ここまで痛いのは、嫌いなのにぃ!
痛みを必死でこらえながら、俺は連れられるままに歩いた。
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