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「道」

「ん? なに、狗牙」

「そいつのこと殴るんじゃねえぞ」

 狗牙の言葉に、ぶりっこが顔を輝かせたのが見えて、本気で捻り潰したくなった。

 狗牙が言ってるのは、僕がお前のことを殴ると嫉妬するっていう意味だよ。

 お前のことを庇ってるわけじゃない。

 僕は狗牙の言葉ににこりと笑っただけだけど、狗牙は理解したらしく、すごく不満げな顔をしていた。

 だから、「我慢してたらまたご褒美あげるから、ね」と言ったら、ちょっとだけ浮上したみたい。現金なイヌだよまったく。

「ほら! 狗牙先輩だってほんとはいやなんでしょ? 俺が絶対助けて――ぐぁっ」

「もうさっきからうるさいなぁ、ちょっとは静かにできないの」

 狗牙みたいに可愛く声を上げられないのなら、呻き声も出さないでよ。

 僕は今までの苛立ちも込めて倒れ込んだぶりっこの身体に蹴りを入れ続ける。

 そして痛みに呻くぶりっこの髪を鷲づかみにすると、むりやり鬘をはぎ取った。

「っい、たぁっ!」

 ぶちぶちと髪が何本か抜けるような音がしたけど、そんなの無視。

 中にあるのは僕にとっては見慣れた金髪のそこそこ可愛い顔。僕の狗牙には負けるけどね。

「ふふ、ごめんね、痛かった?」

「ぅ、ぐっ……」

 ぽいっと鬘をそこらへんに投げる。

 生徒会連中は突然曝されたぶりっこの顔に驚いてるみたい。

 そんなに驚くような顔じゃないでしょ。

 僕は床に倒れ込むぶりっこの腹を足で蹴りつけ、仰向けに転がした。

「うあっ……!」

「……そこそこ見れる顔になったのに、醜さは変わらないんだねえ。残念」

「ぐっ、はぁ、がはっ……やめっ」

「やめて? お前が言っても聞かないのが悪いよ。なら身体に言うしかないでしょ」

 生徒会どもは圧倒されているのかぶりっこを助けに来ない。

 まあやつらはけんかなんて無縁の生活を送ってたことだろうし、暴力なんて慣れてないだろう。

 狗牙は狗牙でぶりっこのことを羨ましそうに見てるし。

 お前には後でもっといいことしてあげるから我慢しなさい。

 僕の制裁はそれからしばらく続いた。

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