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自分の前で跪き、攻撃を受けるイヌに、僕はなんだかすごく高揚感を覚えた。ふふ、すっごく楽しい。
いつのまにか口元には笑み。
まあ笑みと言っても温かみはないんだけど。単なる冷笑?
「やめてじゃないでしょう? 僕が聞きたいのは誰がお前の主人かってことなんだけど。さっさと答えてよ、ねえ、“イヌ”」
「……っ!? ぇ……」
“イヌ”と呼びかけた僕に、ようやく飼い主が誰だかわかったみたい。
でもただ飼い主がわかったからって躾をやめてやるほど僕はぬるい性格はしてないよ。
お前にはきっちり僕に楯突いたこと後悔させないといけないから。
もう僕に楯突く気なんて絶対起きないようにね。
骨の髄まで僕が飼い主だってこと刻みつけてあげる。嬉しいでしょ?
「なに、なんか言いたいことあるの? ねえ、駄犬、言いたいことあるなら言ってよ」
「……! ぐぁっ、がはっ……ぅぐ!」
僕が“イヌ”じゃなくて“駄犬”って読んだら、それまでとは一変して眉を下げるイヌ。
蹴られてるのにも関らずだよ? 可愛いよね。
……でも、今さらなんだよ。いくら可愛くてもまだ許してあげないから。
「さっきからうるさいよ。ちょっとは静かにできないの?」
「があぁっ、ぐ……っ!」
まあ僕が暴行を加え続けてるからなんだけど。
でも、さすがに廊下は人目につき易すぎる。公開プレイなんて僕の趣味じゃないよ。
僕はイヌをちょうどよく開いていた教室の中に蹴り飛ばした。
教室の扉を閉めて、教卓に腰をかける。
暴力がやみ、余裕ができたのか、イヌが僕のことをじっと見ている。
……もしかして許してもらえたとでも思ってるの?
そんなわけないのに、甘い考えで期待を込めた目で僕を見るイヌに、いとしささえ浮かんでくる。
今さっきまでは僕のこと目の敵にしてたのに、バカだよねえ。僕はそんなに甘くないんだよ?
イヌを見つめたまま、僕はにっこりと笑ってやった。
そんな僕を見て、イヌは青ざめながら、「っなんで……」と呟いている。
僕の目がまったく笑ってないということが、むしろ凍えるような冷たい目でイヌを見ていることに気づいたらしい。
さあ、躾の最終段階に入ろうか。
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