それからまた一週間が経った。

 相変わらず僕はぶりっことイヌにイライラさせられっ放し。ほんとどうしてやろうか。


 イヌはよく自分の首をさすってるんだけど、多分僕がやった首輪を構ってるんだ。

 そんなに大事なものなら、なんでそれをあげた僕に気づけないのかなあ。やっぱり駄犬なのか。

 イライラすると言えば、生徒会の親衛隊とか言うやつらにもほんとにイライラするね。

 机に落書きとか何歳児なんだろう?

 ……まあ、この間呼び出されたときにお仕置きしてやったら、それ以来なにもされなくなったんだけど。

 僕のことを見かける度に真っ青になりながら、「ご、ごめんなさいっ」と叫びつつ逃げていくし。根性がないよね。

 僕はイライラしてることを隠しながら放課後で誰もいなくなった廊下をただ歩く。


 今日も散々だった。

 生徒会にはまた呼び出されるし、駄犬には睨まれるし、ぶりっこは果てしないくらいうざいし。

 早く潰しちゃいたい。



 ほうっとため息をついた時だった。

「……っ?」

 突然横から勢いよく腕が伸びてきて、僕はそれを咄嗟に避ける。

 明らかに僕を狙っていたその腕。

 ……僕にけんか売ってるのかなあ?

 はっきり言って僕はもう限界だった。

 もうさあ、いいよね、ストレス発散しても。

 そう思いつつ、冷え切った目で腕が伸びてきたほうを見ると、そこにいたのは……。

「よお、平凡」

「……だけ……白永会長」

 そこにいたのは駄犬こと白永狗牙。

 ……僕にけんかを売ったのはお前か。

 すっと目の奥がさらに凍りつくのが自分でもわかった。

 こいつはほんとに自分の立場がわかってないらしい。

 バカはいらないんだよ、バカは。

 僕は内心とは裏腹ににっこりと笑ってイヌに話しかけた。

「いきなりなにするんですか、ひどいじゃないですか」

「あ? てめえが夏に近づくのがわりいんだろ」

「僕は別に近づいてる気なんてないんですけどね」

「……夏が近づいてるとでもいいてえのか」

 もちろんそうに決まってる。

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