……それにしても、いつまでこの駄犬は僕を睨んでるんだろうね。

 どうせ飼い主だって勘違いしてるぶりっこにひどいこと言うなって言われたから睨んでるんだろうけど。

 飼い主の命令は絶対だって? 

 偽物の飼い主の命令に従うお前って一体なんだろうね。

 表面上は取り繕っていたんだけど、なんだか無性に“イヌ”を捻りつぶしたくなった。

 まあ飼い主が言うことじゃないんだけど。
 動物虐待になっちゃうから。

 その後もうっとうしい劇につきあわされ、その日は生徒会室を後にした。


 それでも寮の部屋もぶりっこと一緒。

 ……こんなやつと四六時中一緒にいるなんて気が滅入るね。

 早く潰しちゃいたいなあ。


 あ、もちろん潰す時はあのクソみたいな劇しかできない生徒会も一緒だよ?

 ……“イヌ”はどうしようか。

 捨てちゃおうか。

 一瞬そんな考えが湧きあがるけど、すぐにいやいやと考え直す。

 そうだよね、捨てる前に躾しなくちゃだよね。

 躾をしてもだめならもう捨てるしかないけど。

 まあその時は駄犬はぶりっこを飼い主にするんじゃないの?


 考えてるうちにすごくイライラしてきたから、僕は考えを中断した。

 部屋に帰ってくるなり、「勉強するから」と一言言って食堂にも行かず自室に閉じこもった。

 ぶりっこはまたなんかぐだぐだ言ってたんだけど、当然むし。

 どうせやつが言うことなんて高が知れてる。

 信者いわくすごくお優しいことを言うんだろう。

 反吐が出る。

 そんなぶりっこに騙されてる駄犬はほんとにありえない。

 勉強するなんて嘘をつきながらずっと考えるのはイヌのこと。

 ……捨てるなんて言いながら、ほんとは捨てたくなんてない。

 だって僕はずっと“イヌ”に会えるのを待っていたんだから。

 ずっと待っていたのに、これってなんだろう。

 イライラしつつも、心のどこかは傷ついている気がする。これも全部イヌとぶりっこのせいだ。

 ……ぶりっこには後悔させてやる。

 そして“イヌ”は、そうだなあ……うん。やっぱり躾ることにしよう。

 僕は納得してその日は、眠りについた。

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