ハラハラと見ている僕と違って新さんや潤さんはおもしろそうに見ていて、でも二人とも結紀を応援してるみたい。……そういえば、ヨシさんは。

 そう思って意識をヨシさんのほうにむけるんだけど、ヨシさんは我関せずで少し離れたところでぼうっとしている。

 そんなヨシさんの様子をじっと見ていたら、ふっと僕のほうを向いたヨシさんと目が合ってしまった。

「……」

「……」

「……」

「……ぁぅ」

 ど、どうしよう……! そんなに見られたら穴が開きそうですヨシさん。

 なぜかじっと無表情で見てくるヨシさんに困惑した僕は挙動不審になりながら視線を泳がせる。

 いつもならそんな顔をしていたらすぐに気がつく新さんも、圭くんたちに気を取られてるのか気がついてくれない。

 助けてもらえないだろうこの状況にどうしようもなくなったころ、ヨシさんがのっそりと動き出した。

「……吉乃」

「え?」

「……吉乃、よろしく」

「あ、は、はい。……えと、秋月海です。よ、よろしく、お願いします?」

 なぜかいきなり自己紹介を始めたヨシさん。そういえばヨシさんだけ自己紹介してなかったっけ?

 そう思い立った僕は、急いで自己紹介をする。

 そんな僕に満足そうな顔をしたヨシさんは、小さく頷くとまた離れて行ってしまった。

「――おい、お前らいい加減にしろ。時間なくなるだろ」

 僕と吉乃さんのやりとりにちっとも気づかなくて、未だ言い争いを続ける結紀と圭くん。

 それにそれを相変わらずおもしろそうに見ている新さんと潤さん。

 止めた声を聞いたことはあったけど、誰だっけ……? と声のほうを見たら、そこにいたのは仕方なさそうな顔をした風紀委員長だった。

 えーと、名前はたしか……。

「……藤村」

 あ、そうだ。藤村喜一先輩だ。

 名前を思い出して、無意味に頷いてる僕を余所に、新さんが藤村先輩に気まずそうに声をかける。

「あ? ……あー、そうか、わりぃ」

「いや。いいから早く座れ。……そこの君も」

「あっ、は、はい! す、すみません……っ」

 目配せされ、僕はとび跳ねながら適当な席についた。

 ど、どうしよう……、怒ってるのかなぁ?

 うぅ、ほんとに、こういう時に一番自分がいやになるよ。空なら絶対に怒られるような真似なんてしないのに。

 最近は僕にも大切な友達ができたりして、そのやさしさに触れて、空と自分を比べて落ち込んじゃうようなことも少なくなっていたのに、一度そう考えるとどんどん思考は沈んでいく。

 こういう暗い僕の性格は自分でもいやになるのに、どうしても空みたいに明るい性格になるのは無理。

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