m a d




R15(グロテスクな表現を含みます。)


神なんていないということは、もう随分と前から理解していて、宗教なんてくだらないということは、もう随分と前から理解していて、それでもジャシン様だとかジャシン教だとかいうのは、そうやって自分を騙していないと生きていけないから。



角都は俺の右腕を切り落とした。それはごくありきたりな行動で、別に角都を怨んだりはしない。ただ切り口が痛いのが不快で、涙が溢れてぽたぽた落ちるだけ。別に怨んでなんかない、ただダメージを受けた身体が、生理的な反応をしただけ。

でもそれは角都の不快感を募らせる行為で、俺は意味もなく左足を切り落とされた。いや…意味はあるのかもしれないけれど。
角都は俺の身体を切り落とすことに性的な快感を覚えるのかもしれない。もしそういう性癖だとしたら、これは角都にとって性的な行為の一部なのかもしれない。あのマスクの下で舌を動かして、あのズボンの下で、なんて、考えていたら無意識に笑っていたようで、またしても角都のイライラを募らせた。

俺は角都に下半身を切り落とされた。よく切れたなあ、と感心しながら、俺は痛みに耐えた。切り口が気持ち悪い。内蔵が外気に触れて気持ち悪い。腸が見えて気持ち悪い。あれは昨日食べた鶏肉か、豚肉か、それとも、ああ、なんでもいい。とにかく腸から肉が見えて気持ち悪い。下半身の感覚がないのに、角都の見下したような目に興奮した。
気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。角都がマスクを外してニヤニヤ笑ってる。気持ち悪い。お前の息遣いのことだよォ、と、言おうとしたら、触手が口内を浸蝕した。

吐きそう、吐きそう、吐きそう。
角都の口から出てきたばかりのそいつはヌルヌルで、もしかしなくても、それは角都の唾液だと思った。舐めようとしても、吐きそうでできない。ゆっくりと触手が口内を伝う。食道に異物。それが気持ち悪くて、俺は胃の中のものを吐いた。なかには昨日の夕食がまじっていて、毛って胃液で溶けねぇのかなあ、と思った。

「角都ゥ」

涙と唾液とでぐちゃぐちゃの顔、血と精液とでべちゃべちゃの身体。そんな可愛いげもない格好で、俺は声を出した。いくら待っても、角都は返事をしなかった。



「俺別に怨んでねェよ、お前がキモチイイならそれでいいよ、俺のこと切り刻めよ、なあ、そんでミキサーにでもかけて俺を液体にして、飲んでよ。もしかしたら俺の細胞が生きてて、身体の感覚が残ってるかもしれねぇから、そしたら角都と一緒になれるな。その後俺はトイレに流されて、下水溝の中で生きるよ。それでいいよ。なあ、角都ゥ、それってキモチイイかなあ、ジャシン様は怒るかなあ、なあ、角都ゥ、黙ってんなよ喋れよ、お前俺のことぐちゃぐちゃにしてくれるんじゃねぇのかよ、なあ、」

ふざけるな角都、俺を殺すのはお前だろ角都、殺してくれよ角都、俺はお前にならどんなことされても構わないから、なあ、角都、じゃあせめてずっと俺と一緒にいてよ。と、言おうとして口を開いたら首が飛んだ。





「うるさい」

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -