昔から飲まされ続けた。酒は別に好きではなかった。アルコールは不味いという概念ばかりが根付いていた。


未成年者の飲酒は法律に

より禁止されています。





法律違反だが、こっちは国家破壊工作メンバーの一員なのだ。国を滅ぼそうというのに飲酒禁止法も何も無い。上司達はよく、私に酒を飲ませて遊んだ。翌日は必ず二日酔いで、頭痛と吐き気に耐えながら任務をこなしていた。





「酒なんて、悪い思い出しかないんですけどねェ…」

そういいながら、4本目の缶ビールに手をかける。酒を飲もうと誘った彼は、まだ1本目を飲んでいる途中だった。


「…たまにはいいだろう」
「いや、いいんですけどね。でも理性無くしちゃったら嫌でしょう?」
「…別に構わん」
「嘘だー、イタチさんいいんですか?私が押し倒したら、イタチさんの力じゃ敵わないですよ」
「その時は月読だ」


冗談がとぶ、心地よい会話。はじめは乗り気でなかったが、こんな話が出来るなら、酒の力も借りてみるものかもしれない。アルコールのせいにして押し倒す気はさらさらないが、そういう会話はしていて楽しい。何せ素面の状態じゃ、下ネタは一切受け付けてくれない彼だ。

「ははは、じゃあ目つむって襲います」

笑いながら、冗談を言う。これだけで救われるような気がした。逃避は良くないというが、これはまた別だと思った。今は現実なんて置いておこう。昔の事なんて忘れよう。

そうしたら少し幸せに、なんて。思った途端に発した彼の一言が、その雰囲気を壊してしまった。

「…する?」

もしかしたら、壊してないのかもしれないけど。その、するだとかしないだとかそういうことを、彼の口から聞けるなんて思ってもみなかったから。




「…し、しませんよ」
「なんで」
「なんでって、そんな…」

どうしてこうなった。彼がこういう話にのってくるなんて想定外だ。もしかして酔ってる?まさか、彼はまだ2本目を開けたところなのに。

緊張と不安でペースが上がる。時々チューハイを飲みながらも、6本目に手をかける。


「鬼鮫は俺としたくないのか」


男は狼です。鮫でも狼です。イタチさんが可愛い女の子なら今の発言で狼の理性が飛んでます。いやイタチさんってそこらの女の子より可愛いんですよ、自覚してないんですか。


「ししししませんよ!し、したいですけど…イタチさんまだ若いですし…」
「結構いい年だ」
「いやいやいや、だって…!」


いいんですか、イタチさん。だって私、きっとイタチさんが思ってる以上に、イタチさんのことが好きなんですよ。もう何度手を出そうと思ったことか。それをギリギリで止めてきたのは、あなたのことが本当に好きだったから。あれ、でもこれって魔法使い脱退のチャンス?


「したくないなら俺がする」
「え?」
「…俺がしてやる」


そういうと、彼は私の頬に手を沿える。

「え、いや、ちょっ…」








目を開けると目の前には彼が。
そしてゆっくりと触れた、唇が離れる。


「どうだ?」

強気に笑う彼はとてつもなく可愛かったが、それより何か足りない気が…。


「………あ…あれ?終わりですか?」
「ん?まだしてほしいのか?」
「いや、あれ?イタチさん今のって…」
「キスだ」


堂々と答える彼の瞳に迷いはなかった。そんな事も知らないのか、鬼鮫は子供だな、と言いながら彼は上機嫌でチューハイを飲んだ。ほろ酔いアルコール度数3%のそれはレモン味で、奇しくも私のファーストキスを、本当にレモン味に仕立て上げた。

「…あれ?」

ちみちみとチューハイを飲む彼の横で、手にした8本目のビールを開ける。


「明日は二日酔いですね…」







イタチのする、はキスする、のする。
30歳まで童貞を守ると魔法使いになれます。別に鬼鮫を虐めてる訳じゃないです。むしろほら初めてはイタチっていう



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