人一倍偉そうに生きているあなたが嫌いでないのは、きっとあなたは偉そうなふりをして、強がっているだけだから。




この世界と君と



「鬼鮫」

自分より年下の男に名を呼ばれ、私は彼に従う。始めは戸惑ったその口調も、今では当たり前のものとなった。自分よりも強いから従うのだろうか、それとも、


「そろそろ休息をとろう…」
「ああ、ではあの木陰へ」

出会った頃より随分と細くなった、その腕や頬に視線を向ける。深くは知らないが、彼は体調が優れないようだ。


こうして休息をとるのが日課となった。始めは躊躇した彼も、今では素直に休息を求める。それは彼が強くなったからなのか、それとも弱く?なんて。私が考えることではないな、と瞳を閉じた。必要以上に干渉してしまうのは、悪い癖だ。




青白い彼の横で、流れる雲を見た。視線を落とすと、彼は瞼を閉じている。こうして見ると顔立ちはまだ子供で、どうしてこんな組織にいるのかが不思議な程だった。

忍の世界では、子供が大人に交ざり交戦することは日常茶飯事である。しかし、それはあまりにも残酷だ。自分もその戦いを果て生き残った口であるが、忍というものはどうにも不憫だと思った。彼だって、忍でなければ今頃平穏な生活をおくっているだろう。


「…なんだ」

突然目を覚ました彼に、驚きを隠せない。



「ああ、まだ眠っていていいのに。今日はこのまま野宿しましょうか」
「いや…いい、もう大丈夫だ」
「いいですよ。イタチさん、まだ顔色悪いですし」
「大丈夫だと言っている」
「強がってないで、ほら、何か食べ物でも探してきますから。あなたはまだ眠っていて下さい」
「…嫌だ」


強情な彼をうんと言わせるのは大変だ。でも彼の弱い言葉は知っている。

「私が休みたいんです、ね。いいでしょう、イタチさん」



歯痒い顔をしながらも、彼は頷いた。じゃあ食べ物だけ探して来ますから、と言い残して彼の元を去る。
垣間見たその表情はやっぱり子供で、私は居た堪れない気持ちでいっぱいになった。


世の中は理不尽だ。どうしてこんな子供にさえ戦闘を強制するのか。才能に秀でた彼を望ましく思うが、同時に不憫にも思う。


今日は久しぶりに、町で食料を買い込もう。彼は強がった表情よりも、年相応の無邪気な笑顔が似合うのだ。

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