フェードアウト




この世界に生きてきて、自分が特別だとは思わないけれど。同じ目線に立って話せる人なんて居なかったから、




情報共有の為に、鬼鮫達と合流した。どうやら賞金首はこの町に居るようだ。喚く飛段を部屋から出して、鬼鮫と二人で話合おう。イタチには悪いが、飛段のおもりをしてもらう。


この地域の情報を共有しよう、と言い出したのは鬼鮫だった。理由は言わなかったが、まだイタチの体調が優れないのだと思った。必要以上にイタチに構う鬼鮫に妬く?まさか、そんな下らないこと。

「ありがとうございました」

一通り話終えたところで、鬼鮫は礼を言う。その時見えた弱気な表情。どうして泣きそうな顔をする。いつもは自信に満ち溢れた態度で、イタチの傍に居るくせに。



「お前は、」

イタチに甘いな、と、言おうとして口を閉じた。イタチの事には触れないでおこう。
かわりに鬼鮫の頬に手を伸ばした。触れた頬は死人の様に冷たくて、思わずびくっと震えてしまう。驚きが伝わらないように、ゆっくりと口を開いた。


「最近、食べているのか」
「…適度に」
「最後に食べたのは?」
「…一昨日ですね」

たわいない質問に、ぼそぼそと答える。鬼鮫の、唇に触れる。そこは乾いていたから、唾液を塗ってやろう、と思った。口内を弄ると、指先が唾液で汚れた。別に汚くなんてないけれど。
手を出した時に指が切れた。するどい歯で切られた指からは、血が。唾液と絡み合ったそれは、西日に反射し、てかてかと光った。


「綺麗だ」


血と唾液が絡み合ったその指で、再びそこを弄る。舌で触れられた傷口が、ひりひりする。幾度か傷口を舐めた所で、鬼鮫にその手を握られた。


幾度か視線が合ったあとに、鬼鮫はコートに手をかけた。自分から手を差し延べたのに、コートから進入した手のひらに怯えてしまう。肌に触れた、自分よりも大きな手のひらに。

「角都さん」



好きだとか愛してるだとか、そんな甘い言葉はなかった。ただ淡々とした行為の中、唇を重ねると血の味がして、それがどんな飾り立てた言葉よりも深く感じた。

手のひらを握り返して思う。
これが一時の気の迷いで、自分が欲の捌け口だとしても、それはそれで構わない、と。




「イタチが待ってるんだろう」

皮肉混じりに言った言葉はどこか弱々しくて。返事を聞く前に、もう一度口を塞いだ。

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