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  17


彼が乗った飛行機は遥か彼方へ飛んでいった。
雪は降っていたものの欠航はしなくて済んだ。
帰ろうと周りを見渡すと、全員物凄い顔でこちらを見ていた。

「ミカサ、お前なんなんだよったく…!」

エレンを皮切りに、全員私に問い詰めてくる。
頭では理解していたが、いざ言われると反応に困った。
けれど、そんな私を見てみんなは落ち着きを取り戻した。

「…けど、ミカサが行かなくて良かったとは思った」
「本当だよ。驚いてしばらく食事も喉を通らなかったんだよ?」
「そうですよ!ミカサが居なくなるって聞いて本当に驚きました…」
「でも、またこうして話出来るんだから良かった」
「ミカサ、また、課題に困ったら助けて欲しいかもしれない」
「…ミ、ミカサ…俺…本当に良かった…」
「…本当に…ごめんなさい……ありがとう…」

最後の最後にこんなことになってしまったことに、申し訳ない気持ちになる。
けれど、私が選んだ選択なので後悔はしていない。
あのままキャンセルしないで行ってしまうほうが後悔する。
それに、またこうしてエレンやアルミンたちと一緒にいることが出来る。
嬉しいけれど、少しだけ変な気分だ。

「そう言えば、さっき店長が笑っているように見えませんでした?」
「私も見えた」
「…そう?」
「またまた…」
「それにしても、ミカサは店長と話している時は子供っぽくなりますよね」
「え?」
「あっ、えっと、気にしないでください!」

サシャは私の反応に驚いたのか、腕がちぎれてしまいそうな程大げさに振って否定する。
まるで私が、リヴァイ店長にでもなったみたいで、そんな反応をされることに少しだけショックを受ける。

「…でも、そうだよね。いっつもバイトの時思ってたけど…ミカサって、店長と話す時はちょっと子供っぽいというか…」
「そんなこと、ない…」
「え〜?そんな風には見えませんよ」
「…もしかして、ミカサ…」
「えっ!?そうなんですか!?」
「…なにを…言っているの…?」

何を言っているのか理解できなく、否定も肯定もする気が起きなかった。
ただ、私が口を開いたところで面倒なことしか起きないと思ったので、何もしないことにした。
帰ろう、家に。
ふと見た、空港のロビーの大きな窓から見える景色は雪のひとつひとつが輝いて見えた。
この空のずっとずっと先に彼は旅立った。
帰りはいつになるかなんてわからない。
けれど、彼が帰ってくるその日まで、私は彼の店を守ることにした。


そこは、こじんまりとした洋食店。
席は15席しかない。本当に小さなお店だ。
無愛想で小柄な店長と3人のバイトが働いている。
今、店は臨時休業をしている。店長は長年の夢を追いかけるために。

そして今日も私は、店長が居ない店をいつ彼が帰って来ても良いように掃除しに行く。

From February 10, 2014 to March 16, 2014.
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