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  08


ミカサが男たちに言い寄られ、襲われそうになったその時、俺はすべてを思い出した。

俺はあの夜、部屋から出ていた。
部屋で殺され外に遺棄されたわけではなかった。
外に出たかった。クソ蒸し暑い夜だったから少し頭を冷やすために外に出ていた。
そして奴らに出くわした。
単なる金目の物を剥ぎ取るゴロツキだろう。
だが、奴らはどこで仕入れた情報なのか知らないが、あいつのことを知っていた。

「アンタ、もしかして調査兵団で噂の人類最強の兵長さん?だったら、東洋人がいることは知ってるか?」
「…」
「黙らないで何か言えよ。その人ってさ、噂によると昔地下街に売り飛ばされそうになったらしいじゃん。可哀想だよね」
「…何が言いたい」

こういう奴らにはやっぱり躾が必要だな考えた。
そして、行動に移そうと少しだけ足を開く。
まず蹴って、それから顔面に二、三発殴ればどこか行くだろう。

「俺たちにその人を譲り受けたいんだよね。お偉いさんならそれくらい出来るでしょ?」
「は?」
「だから、俺らがそいつが欲しいんだよ」

右の男には蹴り、左の男には右ストレート。
男たちは悶える。そして、俺に向かって襲い掛かる。
ほう。結構強めにしたつもりだが、これで襲い掛かる元気があるのなら大した奴らだ。

「悪いがそれは出来ない。あいつは調査兵団、いや、人類のために必要な人材だ。貴様らのようなゴミクズに渡すつもりは無い」
「…おっと。それ以上言うとそいつの命が危ういぞ?」
「そんな子供騙しで俺に通用するとでも」
「俺は確信を持って言っている」

蹴りがみぞおちに入る。
思わず力む。

「あの美しい黒髪、東洋人の特徴だよな」

一方的に殴られる。
抵抗しろ。

「肌もきっと透き通るような白さなんだろうな」

なにをしたいんだこいつらは。
感覚が麻痺してきている。

「目もきっと綺麗なんだろうな。吸い込まれるんだろう?」

そんなこと俺に聞くな。
目の前が暗くなる。
抗え。
こんなところで、俺は、死ぬようなタマか?

「ははっ!人類最強も一人の女の前では猫みてぇになるんだな!こりゃ傑作だ!」
「…サに…手ェ…だしっ…ら…」

息が荒くなる。
こんな奴ら、すぐ倒せるだろう。
なぜ、戦わない。
立ち上がれ、何を恐れて手を出さない。

「っせーよ。タダ飯ばっかり食いやがって」

そこから意識が飛んだ。
ただただ真っ暗だ。
なにも見えなかった。
だが耳の感覚は残っていた。

「…今度、あの東洋人、見つけたら意地でも売り飛ばして金にしようぜ」
「その前に、たくさん良いことしてからな」
「そぉだな。早くその東洋の女、見つけようぜ」

―――れ

――――守れ

―――――ミカサを守れ

――――――この命が尽きてでも

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