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  04


「…まず死ぬ前まで何をしていたか覚えているだけ教えてください」
「あぁ…」

一旦私の部屋に戻り状況確認をすることにした。
紙とペンを取り出して、メモをしていく。
兵長の話だと、殺されたあの日はいつも通り夕飯を済ませた後、自室に戻ったそうだ。
自室に戻ってからは今後の作戦に関する資料を読んでいた。
なぜ、彼は外で殺されていたのか。
そこが問題なのに、記憶がない。

「…クソ。なんで、こんなご都合よく記憶が飛んでいる」
「もしかしたら、部屋で殺されて…それから外に遺棄されたのかもしれません…」
「それも、一つの可能性かもしれんな…」

大事な部分が飛んでいるのはよくあることなのかもしれない。
エレンの記憶障害のことをふと思い浮かべた。
夜の二人きりで静まり返った部屋には微かながらも月明かりが射す。
二人とも椅子に座りながら、考えた。
座りながら…?

「…兵長って、椅子には座れるんですね」
「…たしかに…そうだな…」
「壁はすり抜けているみたいですけど、不思議です」
「…あぁ…」

兵長は少し冷や汗をかいているように見えた。


言われてみればそうだった。
俺は普通に椅子に座っている。
普通だったら座れないと考えて良いだろう。
なのに壁が殴れない。
どういうことなんだ。わけがわからい。

「これも俺が死んだ理由と関係しているのか…?」
「…なのでしょうか…?」

思ったことを呟いたつもりは無かった。が、声に出ていたようだった。
もしかしたら思ったことも聞こえているのかと疑ったが、無反応だったので安心した。

「とりあえず、もう寝ろ」
「…はい」

少し少女は俯く。紙にくねくねとミミズの這ったように線を引く。
握ったペンが震えていた。
だが、俺はそれを見て見ぬふりをした。

「じゃあな…」

彼女の部屋を後にした。


紙に書かれた歪な線を眺める。
なにか自分の中で違和感があった。
その違和感が何かなんてわからないけれど、モヤモヤした。
とにかく胸がモヤモヤして仕方なかった。
どうしたら良いのかわからない感覚に戸惑う。

「寝よう…」

考えても無駄だと思った。
明日も朝は早い。
だったら、明日に備えて寝てしまおう。
ペンを置きベッドに入る。

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