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  13 Ein Gewinner ist sie


Ein Gewinner ist sie

「うわぁあぁぁああぁぁぁぁ!!!」

平原に叫び声がこだまする。
奴らは無慈悲に連れ去って行く。
奴らの前では、人類は虫と同然だ。

「…っ!!!」

雷光のような斬撃に巨人は倒れた。
握り締められた手は力を失い、抜け出す。

「…はぁっ…はぁ…」
「…大丈夫、立てる…?」
「…はっ…はい…」
「よし…じゃあ、馬に乗って、危ないから…」
「…はい」
「じゃあ、配置に戻って…」
「あっ、ありがとうございます!ミカサ兵士長補佐…!」

新兵はそのまま馬の元へ駆けて行った。
それを見送りながら、剣を鞘に戻す。
そして馬に乗る。

「…ミカサ兵士長補佐…かぁ…」
「エレン…どうしたの…」
「…お前は強いからなぁ…さすがに悔しいな…」
「そんなことはない。むしろ、エレンのほうが強い…」
「ありがとうな」
「うん…」
「おい、お前ら呑気におしゃべりしている暇あるのか?」

馬に乗った三白眼がぼやいている。
彼だ。

「リヴァイ兵長!」
「…あなたも呑気に散歩している場合?…私、今日だけで二十三体、倒した」
「ほう…俺は四十体くらいだ…」
「…ちゃんと数えて…」
「めんどくせぇ」
「…今に見ていて…帰るころにはあなたを超えて見せる…」
「同じことを何度言っている。お前は一回の壁外調査で巨人討伐数は俺を超えたことがあるか?」
「…今日こそ、超える…超えて、私が今日から兵長を名乗る…」
「ほう…」
「…あなたは、潔く私の補佐になればいい…」
「じゃあ、兵士長を賭けて勝負はどうだ?」
「…乗った…っ」

そのまま馬で駆けていく。
嫌い。
そういう態度がとても嫌い。
でも、兵長のことを本気で嫌いになれない私も嫌い。
気に食わない。
この人を超える。絶対。負けたくない。
今日こそ、今日こそ―――!

「あっ、ミカサ!待てって!お前、先行くなよ!」
「…あいつはいつまで経ってもガキのままだな…。そんな賭けに勝っただけで兵士長名乗れると思っているのか」
「ミカサらしいとは思いますけどね…」
「…そもそも兵士長補佐なんて役職はねぇよ」
「え?役職無いんですか?」
「むしろ、あると思っていたのか?」
「…はい…。でも、良かったです…」
「は?」
「…昔よりも、ミカサのやつ、よく笑うようになった気がします」
「そうか…」
「あと…」
「…」
「ミカサのこと、頼みました。…アイツはよく暴走するから。それを止めるのは俺でもアルミンでもなく、リヴァイ兵長だと思うんです」
「…」
「まぁ、物理的な問題で、ですけどね」
「だろうな」
「……でも…リヴァイ兵長なら、ミカサこと大事にして―――」
「あ?聞こえねぇよ」
「な、なんでもないです。じゃあ、兵士長賭けて頑張ってください!」
「あぁ」

どんなに信頼している仲間を信じても。
自分自身の腕を信じても。
結果は誰にもわからなかった。

だから後悔しない選択をすることにした。
俺は今まで多くのものを失った。
これからも失ってしまうかもしれない。
まぁ、そんなことになるつもりはないが。
だが今、自分のしている選択はきっと、後悔しないほうの選択だ。
もしかしたら、いつか俺が何度も生きるのを繰り返したのには理由があるのかもしれない。
その理由はまだ誰にもわからない。
それに今は知りたいとは思わない。
このままで良いと思っている。

今日の賭けにどちらが勝ったのか、それは秘密にしておこう。

From September 29, 2013 to September 29, 2013.
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