いつもより遅く起きてきた彼女は、俺を見て「きてたんだ」とへらりと笑った。俺は「何回もチャイム鳴らしましたよ?」と告げる。俺の声は予想以上に不機嫌そうな声をしていて、自分でも驚いた。いや、不機嫌にもなる。約束は9時に駅集合だったはずだ。なのに今の時間は、



「三郎くん、今何時?」
「15時ですね」
「…おぅ…」
「…」


ジトーとした目線を送ると、彼女は気まずそうに「ごめんね」と笑いながら言った。全然謝られてる気がしないし、反省してるように見えない。大体、人に謝るときにココアを準備しながら謝る神経が信じられない。なんて言葉を溜め息一つで外に吐き出し、「もう、良いですから準備してください」と言った。俺は彼女より、完璧大人だと思う。年齢は、別として。「じゃぁ、三郎くんは私が準備終わるまでこれでも飲んでいてください」といって、熱いココアを渡された。俺、ココア好きじゃないって何回言えば覚えるんだこの人。…多分覚える気、無いんだろうな。そして、俺はまた溜め息を吐く。



「三郎くん、今日は良く溜め息つくねー」
「…誰かさんのせいですよ」
「誰の事だかさっぱりだぜ!!」
「…あんただ、あんた」


そういってから仕方なくココアに口をつけると、彼女は俺に抱きついてきた。「危ないですよ、零れるし」「ねぇ、キスしようか」「…支度してください」「キスしたらするよ」そう言うと、俺の頬を両手で挟みキスをする。彼女の唇からは俺と同じように甘いココアの味。「今日は楽しもうね」なんて、いつものへらりとした笑顔で自分の寝室に消えていった。俺はまた一口ココアに口をつける。甘い。
彼女はだらしが無くて、自由で大人としてどうかと思うけれど。俺の知らない甘さを持っていて、俺はそんな彼女の甘さに騙されて、溺れていくのだ。深い深い、夢の中に。






甘い甘い、悪夢である
(離れたくない、離したくない。溺れていたい)







image song by December/あにー
(実は、あにーさんは初めて聞かせていただいたんですが…凄い好きになりました…!声とか歌い方が素敵過ぎて…!イメージソングとしてなっていますが、あんまり関係してない小説になってしまっているかも、です…。残念。沢さん、リクエストありがとうございました!大変お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。これからも『ずるい。』ろよろしくお願いいたします!)



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