美容室をでて、建物の窓ガラスに映る自分の新しい髪型に少し溜め息が出た。やはり、前髪を切りすぎてしまった気がする…。明日、大学行って友達に笑われるのが怖いなぁ、と思いながら右手で前髪を押さえる。こんなことしてみても、意味が無いことは分かっているのに。そんなことを思っていると後ろから誰かに腕を引かれた。驚いて急いで振り向けば、そこに居たのは高校の時に付き合っていた藤真健司がはぁはぁ、と息を荒げながら私を見つめていた。「く、るしそう、だね」と、思わず言葉が溢れる。「お前見つけて、走ってきたから」「どこから来たの?」「反対側の道から、歩道橋…上がってきた、」「あ、相変わらず早いんだね…足」そう言うと、彼は「まぁ、まだ一応現役だし」と呼吸を整えながら私の腕を引っ張るようにして歩き出した。私はそんな藤真に引きずられるようにしながら後ろにつく。足の長さが違うせいだろうか…私は若干小走りだ



「あの、いまからどこに…」
「話、できそうなとこ」
「え、なんで」
「…おまえ、あれから俺と話そうとしなかったから…、」
「…」



あの時というのは、多分私が別れを告げてからのことだろ。少し気まずくて黙っていると藤真は公園に入っていく。公園に入ってからベンチに座らせられ、彼はそのままどこかに行ってしまった。
…はっきり言って、今の状況がまったくといっていいほど理解できていない。藤真に別れを告げたときもう、高校生活を卒業してしまえば会わないんだからと思って残りの時間を避けて過ごしてたというのに…なんで、こんな



「おい」
「え、」



顔を上げれば藤間が私の目の前に温かいミルクティーを差し出していた。私はとりあえずそのミルクティーをありがとうと言いながら受けとる。両手がじわじわと暖まる



「お前、高校のときから好きだったろ」
「…知ってたの?」
「あんだけ毎回飲んでたらおぼえるっつーの」



そういって笑う藤真は、高校のときと変わらないような笑顔で、そんな笑顔を見てしまった私は思わず俯いてしまった。…私には、そんな笑顔向けてもらえるような権利は無い。当時、藤真から逃げてしまったのだから…



「…昔から、俯くの好きな。なまえは」
「だって」
「…実はさ、謝りたかったんだよ俺」
「え?」
「あの時、別れた原因…俺にあったと思うし…。俺、部活ばっかだったもんなー…。ごめんな」
「…」
「って、今言っても遅ぇーけど」



違う、藤真は…なんにも悪くない。藤真は、悪くないよ。違うよ…違う。



「…違うよ、藤真」
「え…、」
「私が別れを切り出したのは、全部自分のせいなの。藤真に言いたいことがあっても、嫌われたくなくて言えなかった。呆れられたくなくて、言えなかった。そうやって逃げ続けてた。それなのに、そんな私の気持ちを分かって欲しいなんて我が侭なことばっかり思って…。それで、我慢できなくなって…」
「…」



そういい終わると、私はまた俯く。藤真はそんな私をどんな顔してみているのだろうか。怒ってるかもしれない。理不尽な奴だって、最低な奴だって…。
頭の上から「顔上げろ」という藤真の声が聞こえる。私は、恐る恐る顔を上げ、藤真を見る。そのとき私の両頬にパシンと言う衝撃。私は驚いて「ひゃぁ!」とわけの分からない声をあげてしまった。藤真はそんな私にお構いしに私を見つめながら「…俺のこと…嫌いだったわけじゃないんだな?」「は、はい」「絶対だな!好きだったのに別れたんだな!」「は、はい!」いや、私何流れ流されてはいとか本音言ってるんだ!ばか!



「じゃぁ…改めて、俺と…付き合って欲しい」
「…え、でも…」
「…そんな風に、言えない雰囲気作ってたのは…俺のせいでもあるから。今度からは、絶対そんな風にしねーから」
「…」
「だから、俺と付き合ってください」



そういって、頭を下げる藤真をみて私は何故か涙が出そうになった。…そんな…答えなんて、決まってる




止まった時間が動き出す






image song by シャッター/a*i*k*o
(a*i*k*oは本当に可愛い女の子の曲で凄く好きです。女の子らしい感じがいい。で、このシャッターという曲は一回別れた彼氏をまだ思ってるって感じの曲だったんですけど、ハッピーエンドにしてしまいました。あの、ほんと曲は凄く素敵な曲なので是非単体で聞いてください^^ さきさま、リクエストありがとうございました!更新遅くなってしまい申し訳ありません。これからも『ずるい。』をよろしくお願いします!)







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