「仙道も、良く飽きないね」と彼女は言った。二人きりの教室。響くのは彼女の声だけ。俺は「何が?」と聞く。彼女はあきれたように溜息をついて言った。
「あんた、浮気するの何回目よ?」
「あれ、何で知ってるの?」
「知ってるも何も、知らない人のほうが少ないくらいでしょ?」
「…困るなぁ、有名人は」
「反省する気ゼロか」
「…うーん」
そういうと、彼女は俺に向かって「もっとしっかりしなよ」と言った。そんな中でも彼女の日直日誌を書く手は止まらない。すらすらと綺麗な字で今日あったことを書いていく。彼女の字は、どこかの女の子みたいに可愛らしい字ではなかった。なんか、学校の先生みたいな見やすい字。俺は、そんな彼女の字が好きだ、好きだ
「でも、嫌い」
「何が?」
「そうやって、見てみぬ振りする癖が」
「…」
「本当は俺のこと、好きなくせに」
「好きじゃないよ」
「うそつき」
そう言ってゆっくりと唇を合わせる。彼女は嘘吐きだ。俺は知ってる、彼女がずっと俺を見てることを。浮気するたびに、悲しそうな顔をすることも。
うそつきな唇は塞いでしまえ