縮まらない距離を、こんなにも憎んだことは無かった。それくらい、本気の恋だった。そう言ってみょうじは夕方の窓から誰も居ないグラウンドを見ていた。卒業式が終わった学校は、もう誰も生徒は残っておらず。静か過ぎる教室は、言い過ぎなのかもしれないけれど世界には俺たちしか居ないんじゃないかと錯覚させるようだった。もし、それが本当だったどれほどよかっただろうか。彼女が悲しむことも、俺が悲しむことも無かったのかもしれない。
「大好きだったのに、それだけじゃ…駄目なんだね、」
「…」
「…私、もっと早く生まれてればよかったな…」
ぽろぽろ落ちる涙が、夕日に反射してキラキラと光る。まるで、それは宝石みたいに綺麗で、なのにその涙は他の人のためだと思うと凄く悲しかった。
「俺は、」
「ん?」
「俺は、みょうじが俺と同じ学年で居てくれて本当に良かったって思うし、はっきり言って…。早く先輩には卒業して、欲しかった」
「…私の話、聞いてた?何で、そんなこと…」
「だって、そうじゃないと…。俺のことなんて一生見てくれないだろ?」
俺は、みょうじのことが大好きなんだよ。最後の一言が小さくなるのが自分でも分かった。情けなかった。こんな、人の弱いところに漬け込んで告白なんて、本当にずるいと思った。でも、そうでもしなきゃ見てくれない気がしたんだ。…少しでも良いから、見て欲しかったんだよ…。俺のこと、
俺だけのことを、
なんて世界は優しくないんだろうか