私は切ない恋をしている。きっと、どこかの小説では私の恋を語るのにはそんな風に語り手が言ってしまうんではないだろうか。そんな気がした。私達以外誰も居ない教室。宮城と二人きり。私の目は外のオレンジ色の空を見ていた。どこを見ているわけでもない私の目線の先を、宮城は探すかのように同じ方向を見るが、案の定何も見つからなかったのか「何見てんの?」と聞いてきた。
「何にも見てないよ」
「なのに外見るの?」
「宮城の顔見るの、照れちゃうから」
そういうと、宮城は「良くそんな事、簡単に言えるよな」と小さく溢した。私はそんな宮城に。どっちがだよ。と悪態をつく。宮城の方がよっぽどそうじゃないか。彩子に対して、好きだとか可愛いだとか言ってしまうじゃないか。くそう、泣きたくなってきた。オレンジの空が目に沁みる。私は、ゆっくりと机に伏せる
「眠い?」
「悲しい」
「顔上げろって」
「…好き」
伏せた腕の隙間から、宮城の顔を覗く。案の定困ったような顔をして私を見つめていた。ごめん、困らせるつもり無かったんだよ。
「なぁ、」
「ん?」
「…さみぃから、帰ろ」
「…うん」
宮城はさっきまで自分の首に巻いてたマフラーを私の首に巻いた。私は何も言わず宮城の手を握る。
何でこんなに優しいんだろうね、馬鹿だね。そう思いながら、私は宮城の優しさに甘えて溺れて、恋をしているのだ。
あなたの海は深くて暗くて、なんて甘いのかしら