今日は、私が消えて残るものについて考えたいと思います。そうでかでかとホワイトボードに書いて私は前を向いた。目の前に居るのは土屋だけ。ちなみにここは部室である。彼はきっと災難だと思っているに違いない。なんせ今の時間は昼休みが過ぎて授業が始まった時間である。人生には三つの坂があるんだよ!上り坂下り坂、そして『まさか』!土屋は人生の教訓にするといいよ、って聞けよ話!あほ!
「わかった、わかった。でもとりあえず足立にメールさせてや。調子悪いって先生に言っといてもらわなあかんやろ」
「えー、私のことも言っといてや」
「変な講義始めてますって?」
「しばくぞ」
「すんません」
土屋は、メールを打ち終わったのか私のほうを見て「で、なんだって?」と尋ねた。こいつ、全然話聞いてへん…!私は溜め息をつきながらさっきと同じように説明する。
「だから、私が消えて残るものについて!」
「消えるにも色々あるやん。失踪とか逃亡とか」
「何でそんな聞こえの悪い言い方しかできへんのよ!ちゃうわ!もっと、こう。突然泡になって消えるとかさー!」
「死んでしまうとか?」
「そこまでは言わへんけど。まぁ、そんなとこ」
土屋はその話を聞いて「泡になって消えたら、洋服とかそのまま残るんちゃう?」と笑っていった。だが、私はそんな意見が聞きたいんじゃない。もっとメンタル的な何かを求めているのだ。
「土屋の言うことは最もやけど、もっとちがくて。メンタル的な、」
「そんなの、悲しみしか残らへんにきまっとるやろ」
「え」
「何があったんか知らんけど、そんな変なこと考えんといてよ」
…やっぱり土屋には何でも分かってしまうんだと思った。私のほしい言葉を土屋はいつだってくれる。そして、そんなやさしい土屋に甘える自分は最低だ。土屋が急に立ち上がり私の手を引いて、抱きしめた。耳元で「俺なんて、考えただけでも涙出るわ」といった言葉に「ごめんね」と返すしか出来なかった。変なこと言うてごめん。もっと、もっとがんばるから。
土屋の肩越しに見える後ろの鏡に映ったホワイトボードが私に尋ねかける
『私が消えて残るもの』
それは多分、土屋の涙と愛だけだろう。
やさしさに包まれる