「お前も飽きないねぇ」とスポーツドリンクを飲みながら隣に座る三井さんに、私は「その言葉、リョータに言ってやってくださいよ」と溜め息をついた。三井さんは「似たもの同士と言うか、なんと言うか」と呆れたような顔をする。私と三井さんの視線の先には、いつもの様に彩子にちょっかいを出すリョータの姿。心の中で気づけチビ、と唱えてみる。まぁ、唱えたところでリョータが気づくなんてさらさら思ってはいないが。私はゆっくり立ち上がり体育館を後にする。そんなわたしの後ろを三井さんが歩く。
「今日も見学すんの短ぇーな」
「少しずつ、リョータが彩子と仲良くしてる光景を見るのに免疫つけてるんです」
「免疫つけてどうすんだよ」
「最終的にはじーっといつまでも見つめてやる」
「きも」
そう短く言う三井さんに私は「長髪の三井さんほどではないですよ」といってやった。あの時の三井さんはお世辞にもかっこいいなんて言えないからね。なのに、いまは少し髪の毛切っただけでイケメン扱い。世の中の女なんてそんなものである。くそう、世の中の女は私を見習うべきだ。リョータを思い続けてもう10年だぞ!これくらい純粋に恋してみろ!(それが実るか実らないかは…別として)
「…お前さ、俺にしろよ」
「…何言ってんですか?」
「俺は本気だ」
「…」
急に聞こえた声に、私は足を止めた。三井さんの真剣な声に、私は振り向けない。振り向いたところで、私は何もできないからである。
「なぁ、みょうじ…そんな」
「私が、」
「…」
「私がここで三井さんと付き合ったら、彩子に振られたリョータを誰が慰めてあげられるんですか?」
「それは」
「私は、待ってるんです。リョータが、帰ってくることを」
世界のかげは繋がっている
(ぼろぼろになって、傷ついて。そしたら私が、慰めてあげる。だから、はやくかえっておいでよ)
110705 パソコンの整理をしていたらリョータの小説が見つかりました^^