仙道の部屋の本棚から適当に選んだ本の巻頭には、「世界を敵にまわしても、」なんて生温い言葉が記されていた。私は背表紙をみて作者を確認する。名前は聞いたことあるが、よく知らない作者であった。「その本興味あるの?」本を持ったまま振り返れば、飲み物を二人分持った仙道が笑顔で立っていた。「ごめん、勝手に見たりして」「構わないよ」飲み物をテーブルに置いて、私の手からさっきの本を取る。「この作者、好きだったのになー」「もう居ないの?」「この本を書いて、自殺しちゃったらしいよ」ペラペラと本を捲りながらそう言う仙道は、本当にこの作者が好きだったのか疑問に思ってしまうくらい、淡泊であった。「まぁ、あまり人気も無かったみたいだけど」「そうなんだ」「だから、この本が遺書の代わりみたいな物らしいよ」そう言うと、パタンと本を閉じて私の方をみた。ゆっくりと顔が近づき、一瞬唇が触れ合ってまた直ぐにはなれた。「あれ、驚かないの?」「もう馴れちゃったよ」「なーんだ、残念」仙道はそう言って私と離れた。残念そうな顔、してないくせに。


「世界を敵にまわしても、君を護る。僕はそう誓ってるんだ。」


そう言い終わると仙道は「少しはどきっとした?」なんて聞いてきだが、私のほしい言葉は、そんな小説の巻頭じゃなくてもっと、簡単な言葉なんだよ。仙道。



救世主
できることなら、助けてほしい








110424 好きとは言ってくれない仙道






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