大丈夫?と優しい声で、彼は私の欲していた本を意図も簡単に取ってしまった。私はありがとう、とお礼を告げる。彼はまた優しい声で「どういたしまして」と笑った。神くんは他の誰かには無いような、温かさを持っていた。私はそんな温かさに触れる度、彼を好きになっていった。温かさに触れる度、なんて言っても私はそんなに彼と接点は無い。いまだって、彼が図書委員だったのを初めて知ったくらいだし。
「夏目漱石とか、渋いね」
「教科書に載ってたでしょ?だから読んでみたくなって」
「そっか」
「そう言えば、神くんって図書委員会だったんだ」
そう伝えれば、神くんは「違うよ?」と言って近くの椅子に座って私をみる。「違うの?でも、この時間は」図書委員しか居ないはずの放課後だ。じゃあ、なんで神くんはここに?
「みょうじさんが図書室入るの、見えたから」
「え?」
「もしかしたら話出来るんじゃないかなって思ってきたら、こうやって話せた」
神くんは最初に声をかけてくれた時のように、やっぱり優しく笑っていた。…そんなこと、言われたら…期待してしまう。そう、小さい声で溢せば「良いよ、期待して」と、今度は真剣な顔で言われてしまった。私はそんな神くんに何も言えずにいると、彼は一言言うのだ。
「みょうじさん、お話しようよ」
ゆくゆくは溶けて混ざってひとつになる
110318 神が図書室にいたら良いな、って思う