兵助の部屋に行くと、兵助は部屋の隅に三角座りをし頭を抱えながら座っていた。今回は酷いな。そう思いながら兵助に声をかける。返事は無い。勘右衛門が「兵助やばい」という理由が分かる。



兵助を一言で言ってしまえば、彼は優しすぎる。六年生の実習での話を聞いて精神的に落ちてしまったりするし、人の不幸を自分の不幸のように考えて、悩んでしまうくらいだった。そんな彼が実習で人を殺めるなんてなれば酷いものだ。任務はしっかりこなす。いくらでも人を傷つけて殺める。でも、その反動が酷い。殺める人数が多ければ多い程。




「実習お疲れ様、」

「…」

「勘右衛門がゆっくり休めって、」

「なまえ…」

「うん?」




兵助の近くまで行くと、腕を掴まれて兵助のほうに引かれた。私は予想以上の力に、倒れこむ。兵助はそんなのも気にしないで私を仰向けにして馬乗りになった。





「兵助、」

「人、殺して…」

「うん、」

「苦しんでて、」

「うん、」

「なのに、先生には褒められて…」




ポツリ、ポツリと兵助から落ちる言葉を私は、ひとつひとつ壊さないように拾う。頷きながら、丁寧に拾って自分の中にしまう。苦しいと助けてくれと乞う。そんな兵助を見て、私は兵助には忍なんて向かないのだろうと思った。





「いいことなんて、してないのに」

「でも、それは今の私たちにとったら正解なんだよ」

「普通は間違ってる…。罰せられるべきだろ…?おかしい…変だろ…」

「普通じゃないんだよ、忍って」

「…なまえ…」

「普通なんかじゃ、ない」




私はゆっくり兵助を抱きしめる。任務のままの格好だからか、微かに香る血の匂いが余計に兵助を苦しめるんだろう。






「兵助は優しいんだよ」

「…」

「普通じゃなくても、可笑しくても、兵助が兵助でいてくれるなら私はそれで良いよ。私はそんな兵助が好きだよ。」


兵助は顔を上げて私の目を見た。やっと目が合ったね、そう笑うとぽろりぽろりと涙を流した。辛いね、悲しいね、何で忍なんて仕事したいと思ったの?自分がこうなるって分かるのに。馬鹿だね。馬鹿がつくほど優しいね…。兵助






それでも彼は
(また人を殺めるだろうね)












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