彼女は矛盾していた。
「一緒にいるのが苦しい」と言って泣く癖に、僕のところに来る。僕はそんな彼女を抱きしめて「そんな悲しいこと言わないで」とつぶやく。そんな日常が続いていたある日、彼女が急に僕の部屋に来た。




「どうしたの?」

「…別れたい」




静かな部屋に響く彼女の声は、消えてしまいそうなほど小さな声だった。そして、そんな声で話を続ける。




「三治郎と居るのは、苦しい。…一緒に居るくらいなら、」

「死にたい?」



その一言を言うと彼女はゆっくりと頷いた。なんて可哀想な子なんだろう。悩んで苦しんで、ここまで追い込まれる癖に、追い込ませている僕のところに縋るんだ。頼る友達も、縋る相手も居なくて、僕のところにやってきてしまう。
可哀想で、でもそれ以上に可愛い。



「そんなこといって、僕が君を殺すとでも思ったの?」

「…」

「そんな悲しいことしないよ、僕は君が愛しいから。」

「最悪、ね」

「いくらでも言ってくれて構わないよ。でも、僕は君を手放す気なんて無い。だって、君のその悲しみにくれる顔が、好きで堪らないから」





彼女はそれを聞いて、また泣きそうな顔をする。僕はそんな彼女の顔を見て自然に笑顔になってしまう。なんて素敵な顔だろうね。興奮する。
僕が近づいても逃げる気力の無い彼女は、あっさりと僕の腕の中に収まった。僕はそんな彼女の顔に口付けをして、「愛してる」と囁くのだ。






愛してる、なんてただの束縛でしかならないのだ














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