阿婆擦れ女、そう毒づきながらすれ違う彼女は自分が見たことのないような幸せな顔をして伝七と仲良く歩いていた。ギリギリと胃が痛い。喉がヒリヒリして、今にも罵倒を浴びせたい気分だ。同じ委員会で、同じように過ごしてきたと言うのに何故伝七を選んだのか理解に苦しむ。意味が分からない。一緒に居たときに頬を赤く染めて照れていたのは何だったんだ。「兵太夫は優しいね、」と微笑んでいたのは何だったんだ。隣を歩いていた三治郎が「今の、なまえちゃんだね」と二人の後姿を見ながら話しかけてくる。



「伝七と付き合ったんだ?」
「…」
「僕はてっきり兵ちゃんと付き合うのかと思ってた」



仲良かったし、と付け加えて僕ににこりと笑いかけた。そんな三治郎に「煩い」と一言呟いて歩みを速めた。そんなの、自分が一番思っていた。このまま一緒に委員会をやって、僕から告白してやって付き合って、ゆくゆくは一緒に、一緒に…
そんなことを考えてると、三治郎に「兵ちゃん、目…」といわれる。自分の目を触れてみれば涙が指先についた。なんだよ、これ。情けないな…、そう思うのに涙が止まらない。ふと、後ろを振り返り二人の後姿を見れば涙で霞んで見えなくなる。嗚呼、少し前まではあんなに近くに居たと言うのに。




掴めないのは空気と君の手
(どんどん溢れる涙は、まるで君への愛のようで)





(120422 笹山)
思わず泣いちゃう兵ちゃんとか可愛すぎる!って思って書いたんですけど、なんか足りないですね。やっぱり。







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