私の中で鉢屋三郎という男は、あまり良い印象をもっては居なかった。変装の天才と言われているだけあって、どんな人にも姿を変えるしすぐに人を騙す。それは忍びにとって重要ではあるが、あまり好きになれるようなことではなかった。そんな彼が告白をしてきたのは、二週間ほど前の話。彼は学園の裏に私を呼び出し小さい声で「好きだ、付き合って欲しい」と呟いた。その時の彼は私の知っている変装の天才なんかではなく、顔を赤くして緊張をしている只の一、男子でしかなかった。




「それで付き合っちゃう、あんたもどうなの?」
「うーん…でも考えてるほど悪い子じゃないよ」
「あんたねぇ、それ騙されてるよ」
「…あ、鉢屋」



そう私が呟くと、友達は嫌そうな顔をして「じゃぁ、私行くね」と廊下を曲がっていった。鉢屋はそんな友達を見て「悪い、邪魔した?」といったから「全然、平気だよ」と笑う。そんな私をみて、鉢屋も「そっか」といった。




「なまえは、団子すき?」
「うん、好きだよ」
「じゃぁ、食べよう」



そういって鉢屋はお団子を私の前に差し出した。縁側に二人で座る。話を聞けばこのお団子は、五年の仲良い子たちで食べるつもりだったようだが急遽止めたらしい。何故かと問えば「なまえ、甘いもの好きだろ?」と言って鉢屋は照れながらそっぽを向いた。




「…ありがとう」
「おう」
「このお団子、おいしいね」
「…うん」



そんなお団子の広がる甘みに幸せを感じていると鉢屋に声をかけられる。鉢屋の手には、お団子がまだ残っていて、私のお団子は既に全ておなかの中だった。私は「何?」と返事をする。




「あのさ、」
「うん」
「俺、なまえのこと、凄い好きだから…」




告白のときと同じように頬を赤く染めて、その照れを隠すかのように遠くを見つめる鉢屋。そんな鉢屋を見て、私も頬の熱が上がるのが分かる。心臓も、ドキドキと動きを早める。鉢屋は、確かに変装の天才で誰かを騙す天才なのかもしれない。でも、そんなものの前に、実は只の照れ屋な男の子なのである。





恋は酸素みたいに体を蝕んでゆく








110313 鉢屋の黒い部分を無くすと、只の照れ屋の可愛い男の子になるんじゃないかと思っています。


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