不幸者 | ナノ
  prologue
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 フォミクリー。簡単に言ってしまえば、複製する技術。物でも、人でも、それは可能。だが物だけに限られてしまった今、この行為は禁忌とされている。


 私は頭を抱えペンを放り出した。どれだけ紙に書きなぐり連ねてもうまく最後をまとめることができない。完璧とまではいかなくとも、瓜二つとはいかないまでも。私という存在をもう一人作り出したかった。否、私ではなく私の“弟”に似ている存在をもう一度……。
 禁忌とされていることは理解していた。だが、私に諦めろという方がおかしい。もう一度、もう一度と望み続けていればいつの間にか私は一人になってしまった。それでもいい、誰に助けられたいなどと思っていない。私には時間がない、何度でもいくらでも試して、完成させる。


「…………――いや、それでは結果に結びつくには……」


 ああ、考えてもうまくそれを結論づけられるものが出てこない。私はペンを投げ出し、立ち上がる。考えても仕方ないのなら、もう今日は寝てしまおう。時間はたくさんあるのだ。誰も私の邪魔をしないのだから、私は私の時を過ごす。



「──ん?」



 資料が散らかし放題の部屋から出て隣の寝室へと歩みを向けたとき、誰もいるはずのない廊下には人が倒れていた。それも少年だろうか、桃色のマントに青を基調とした格好をしている。いかにも良いところの少年っぽいが。久方ぶりに自分以外の人、しかも異性(と認識するには年下だろう)がきたものだ。暫くの間、どれほどかは忘れてしまったが人と話していない。
 だからだろうか。私は珍しく、その倒れている少年を抱えて私の寝室へと連れて行く。ちゃんと食べているのか、それともこの少年が小さいのか。女の私でも軽々と抱えられてしまったことに、少し驚いた。









     

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