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心の安らぎ






アリア自身も驚いていたが、皆も驚いていた。


皆の視線を気にすることなくジューダスは話し出す。



「お前は最初やはり怪しい奴だと疑った。だが、お前は純粋に皆を好きだということを言葉ではなく行動で示した。だから、お前は人だ。あの時何かあったかなんて関係ないだろう。」



『それだけで十分だ。』と言い、まるで恥ずかしくなったかのようにそっぽ向いてしまった。


アリアはそんなジューダスに近づいてそっと手を握って『お散歩しよう。』と声を掛けて答えを聞かずにそのまま部屋から出る。




「お、おい…アリア…?」


「ここは、兵士たちが武器を作ってもらったり、買ったりする場所で…ここが待機したり休憩するところ!で、あっちが…。」



ただただ手を繋いだまま歩いて話すアリアにジューダスは無理やり立ち止まってアリアを自分のほうに向かせた。


しかしアリアの表情はどこかせわしなく、落ち着かなくなっていた。

何より、ジューダスと顔を合わせないのがジューダスにとっては不愉快な気持ちだった。




「…なぜ顔を見ない。」


「……まだ、怖いから…。」



深く追求することなくアリアの呟いた言葉を聞く。

俯いて顔を合わせずに、ただ気まずそうにするアリアは今ジューダスといることに居心地をよく感じてはいるのにせわしない。



「私…ちゃんとジューダスと、お話したことなかったから。あの、ね…。ごめんなさい!」


「…?」


「初めて出会ったとき、失礼なことしたから…。あなたは、皆が大切で、大好きだから…私を疑うしか出来なかったんだよね…?人じゃない私は、何度も一緒にいていいのかなって、不安になってた。」


「……だが、今はあいつらはお前を受け入れ、仲間として、お前も大切な仲間として一緒にいる。人じゃないなんて言うな、お前は間違いなく人だ。怯え、泣き、笑うだろう?」



『それだけで、お前は人なんだ。ちゃんとした。』と付け足すように言葉を発せば、アリアは下げていた顔を上げてジューダスをじっと見つめる。


流れるように皆といることで、アリアはどれだけ不安を感じていたかなんて、本人と彼女の不安を聞いていたユリアラだけだった。


それが今全部許されたかのように、ジューダスの言葉でアリアは心からホッとして涙を流した。


もちろんそれに驚いたジューダスはどうしたのかと声を掛ければアリア自身もわからずに涙を懸命に拭うがなかなか止まらない。


そんなアリアにやっと理解できたジューダスはそっと頬に手を添えて親指で優しく涙を拭えば、ゆっくりとアリアはジューダスと目を合わせる。

アリアの瞳の中に映るジューダスは優しい表情を浮かべており、アリアはまるでもう二度とないかというようにじっと瞳に焼き付けた。








title「世界に染まって生きていく」byたとえば僕が
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