真実のもう一つ
アリアは頭の中に流れる光景を、じっと静かに見ていた。
あの場所からまた、知らない場所へと飛ばされたかと思えば動くことも目が覚めることもできずにただ脳だけが起きていた。
そこにはジューダスに似ている人物、リオン・マグナスと仲間たちが対立していた。
それは彼の最期の皆が見たリオンの姿であり、彼がこれから先裏切り者と歴史的に残る瞬間だった。
リオンの姿はまるで重なるように、それはジューダスとなり、現在の姿となった。
アリアはここでジューダスはもともとリオンとして生きていて、そして今ジューダスとして皆と行動をともにしているんだとやっとの思いで理解できた。
幼い彼女にとって、幼い考えをもつ彼女でも、それはすぐにわかっことがあった。
今自分とともに居るのはジューダスで合ってリオンではないということ。
アリアは考えた、たくさん、見せられている光景がスローで動いているように、どれだけ彼は危ない存在だといわれているように見せられていても、アリアは考えることをやめなかった。
考えて、考えて、そしてそっと見せられている光景に蓋をした。
それは、アリア自身が彼を受け入れるということを意味している。
「私は、私の信じるあの人を……好きでいたいから。」
そこで、誰かがアリアに語りかけた。
“それでいいのか”という言葉がアリアの心を揺さぶらせようとしていた。
しかし、それでもアリアは笑みを浮かべて静かに頷いた。
声はわからない、と繰り返してスッと消えていき、アリアの意識は浮遊していく。
最初に肌に感じたのは冷たく、やわらかいものだった。