涙二滲厶
そして、目の前にはアリア自身の記憶にあるものが流れた。
ミアでは無いミアが、自分をミアだと名乗る彼女はネリエルという女性だった。
全く同じ顔を持つなど、世の中にはありえない。
しかし、この世界ではあるようで、だが彼女はレプリカではなく、ちゃんとした人だった。
記憶があった時と違い、アリアは幼くなった。
何の影響かは分かっておらず、今回は知られることなく、ついに戦場へと放り出された。
眺めていたカイル達は食い入るように眺めていればアリアは、心臓を射抜かれ死んだ。
倒れたアリアに駆け寄ろうとしたカイルは隔たるような壁に遮られてしまった。
そして周りの光景は変わり、倒れたアリアはゆっくりと起き上がるがへたり込んだままどこを見るわけでもなくぼんやりとしていた。
「私……。」
誰ともなく、アリアは小さく言葉を零した。
「……人じゃ、ない…私は、…作りもの…。」
「そう。私は作りもの。そして、あんたは私のもう一つの私だ。」
自然体に入れ替わるように以前の記憶を持ち、それはひとつの人格としてアリアの中で眠っていた“アリア”だった。
ジューダス以外はこんな“アリア”を見るのは初めてで驚きを隠せなかった。
尚もアリアの表情は変わり変わっていく。
「以前から、出たがってたのは…あなた、だったんだ…ね…。」
「そうだよ、私は出たくて仕方なかった。縛られている何かから離れる事が出来たからさ。だけど、どうだよ。あんたが私を押し込めるんだもん。私の体を返してよ。」
「や…いや……私、私ね…まだ生きていたい。」
「はあ…?ふざけないで。元々は私の体だよ。」
「違う…今は、私…私がいる…ここ、大好きな人が、いるの…やだ。」
めまぐるしく変わる表情にアリアは肩で息をし始めた。
どちらも引かない様子にジューダスは隔たるような壁に遮られる場所まで近づき、そっとアリアに声を掛けた。
「……アリア。」
「…!ジューダス……?」
「…僕は……僕が知っているお前は…」
「こんな、子供みたいな私の方を…お前は選ぶの…?」
「……貴様には聞いていない。」
「っ、私だって…“アリア”だ!」
『くそ、くそっ!』と地面を殴るように拳を叩きつけながら悔しく、悲しい表情から一変し、殺意の篭った表情をジューダスに向けた。
「………あんたか…あんたが、もう一人の私を…。」
「…?何を言っている?」
『分かってないの。』と鼻で笑いながら自嘲気味で“アリア”はアリアがジューダスを好きだと言った。
その言葉をジューダスはどう受け止めたか分からない、しかし微かに“アリア”は表情を歪め言葉を続けた。
「家族、なんてじゃないや…何、これ……。…あはは、未知の感情をあんたに抱いてるね、もう一人の私はさ……。」
その時、表情が変わり、真っ赤な顔をしたアリアが慌てだした。
「あ、…ちが、違います違う…!私…違…っ…!!うっ!」
突然苦しみだしたアリアに皆は名前を呼ぶがそのまま倒れ込み、そして分裂したように、目の前に本来の“アリア”が姿を表した。