記憶ヲ辿リ
「初めまして。ミアと申します。今日からあなたの世話をすることになったの、よろしくね。」
見せられている光景に、アリアは目を見開いた。
初めてミアと出会った場面に。
しかし、これ以前に見せられていた本当の自分と本当のミアの姿に、これ以上ないくらいに目を見開き見つめた。
違うと、アリアはゆったりと首を振る。
だが、それでも嫌というほどに勝手に記憶の中の出来事は動き出す。
ミアでは無いミアはアリアを抱きしめ涙を流した。
アリアは尚も首を振り続けた。
違う、と言い聞かせながらもしかし腕はミアを抱き締め返していた。
すると、そこから巻き戻されるように目の前の光景が変わっていく。
暫く止まることはなく、変わり続けていった後ピタリと一時停止するようにある光景で周りが固まり、動き出した。
「お願い…!アリアを…アリアを使わないで…!まだ、まだ五年しか生きていないの…!」
そこは機械に繋がれ動かなくなったアリアと、今にも自分が殺されてしまうと分かっていながらもアリアを助けようとするミアの姿だった。
勿論、アリアの記憶な為、アリアは機械に繋がれている。
記憶を見せられている為に、動けはしないが認識はできていた。
「使わない、だと…?なら、お前はなんの為にこいつを育ててきたんだ。戦場で役立てる為、預言に詠まれない為、沢山理由はある。だがこれは、お前の友人が望んだことだ。」
「そんな…そんな事は…!」
『なんだ、知らないのか?』そう言い、アリアのオリジナルである彼女の話をしだした。
レプリカを生み出す事に賛成しており、彼女自身が最初の実験台になると名乗り出た。
未完成状態では完璧なレプリカは生まれないと分かっていた為に彼女自身の負担が大きかった。
元々病を患っていたのが、悪化し、最後に彼女は自分のレプリカに会いたいと思いながら死んだという。
「彼女はちゃんと、賛同してくれていた。」
「違う…彼女はただ弟のレプリカを作りたかっただけ……こんな、人形みたいに使われる為の存在を作る為なんかじゃ…!」
「お前も同じことが言えるだろう。」
『私は違う!』と、言葉を遮るように叫び、ミアは涙を流した。
自分はこんな事の為に、アリアを大事にしてきた訳ではない。
そう必死に訴えかけるが、相手は聞きもせず、そのまま機械を動かしはじめた。
するとアリアが見ていた場面が変わり、今度は自分が見ている側となった。
機械に繋がれた自分自身は何かを流し込まれているように体は痙攣し、口が開いたり閉じたりを繰り返していた。
泣き叫ぶミアに、機械に繋がれたアリアはかろうじて意識がある時にミアに手を伸ばしていた。
しかし、届くはずもなく、それはだらんと落ちてついには動かなくなった。
必死に呼びかけ、ついには後ろから斬られ刺され、ミアは死んだ。
自分を必死に守ろうとした本物のミア、そして手を伸ばしていた以前の記憶を持つ自分に、アリアはそっと目を閉じた。
その光景をカイル、リアラ、ナナリー、ロニ、ジューダスはそれぞれ驚き、見つめていた。