あなたの為に | ナノ
雨宿り




これは、私が生まれる話。

私の生まれた場所は研究所。

私は作られたから、だから、生まれた場所は研究所。


ぬめりつく液体は、裸な私の体に鬱陶しく張り付く。

完成した、等と言葉が耳に響いて私を見詰めてくる目が気持ち悪い。

布一枚包まれて、私自身は何がなんだか分かっていない。

部屋に来て、まず聞いたのが、私はレプリカ、らしい。



「……う、ぁ…?」


「あなたは、レプリカ。作られたの。私はミア。あなたのお世話係よ。」


「ぃ………あぅ…、…。」



後ろで一括に髪を結っている彼女は私の初めて見るちゃんとした、人だった。

私は言葉を話せない、そんな私にミアは『これから覚えていきましょう。』と言い、私の頭を撫でた。

もしもこの人が私を人では無いと知っていなかったら、知った時には驚くのかな、なんて考えていた。


数ヶ月が経って、私は武器を持ちはじめた。

それはミアの持つ、弓だった。



私にとって弓は体の一部のように感じられた。

毎日毎日、弓を持って、たまには勉強して。

それが、私は楽しかった。



「アリア。今日は少し外を歩きましょう?」


「……うん。」



頷き、ミアの後について行けば小さな庭みたいな場所に案内された。

部屋とミアとの訓練場所以外は行かない為に、私にはとても幻想的で、綺麗だった。



「ミア…ミア!ここは、とても…綺麗だ!」


「ふふ、そうね。私には見慣れてしまったけれど。」



穏やかに微笑むミアは可愛くて、私よりも幼いようにも見えた。

いつか、もし、私がミアと姉妹というものになれるのなら、きっとこんな感じなのだろうか。







――家族、そんな間柄にはなれはしないのに。




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