秘密を抱える者
『……アリアは、多分何かを抱えていやがる。』
『それは…ユリアラにもわからない事?』
『当たり前だ。僕はあいつと出会ったのは最近みたいなもんなんだよ。あいつの過去を知るはずもないんだ。一年しかない記憶に、何を聞こうがアリアは答えることは難しいだろうよ。』
『そっか……うーん……なら、彼女は誰なんだろ。』
『……それが分かれば、僕だって対処するんだけどな…。だが、確実にわかるのはあいつはアリアであるには変わりねえ…が、“アリア”じゃねえんだ。』
「…………演技、では無いだろうな。あの様子だと。」
『アリアがんな細かいこと出来るわけねえだろ。バカ仮面。』
「っ、貴様…!」
『わわわっ!坊ちゃん抑えて抑えて!ユリアラもアリアとちゃんと話が出来なくて冷静じゃないんですよ!』
アリアを部屋に連れていき、誰もいないと分かりユリアラを抱えジューダスは部屋を出て別の部屋を借りて話し合いをしていた。
メイドには武器の手入れをしたい為に説明をし、誰も入れないように鍵もかけた。
そして、ユリアラにはやはりあの布が被されており話せない状況だった。
いつから被されていたかと聞くとふとアリアの様子が突然、と言うよりも自然体な形で変わった時に被されてしまったと言う事をユリアラは話した。
すると独り言のように『全部聞いていたから知っている。』と言い、そこからはジューダスが違和感を感じた所からだった。
料理を作ると言い出した明るく元気な表情。
しかし、それはそう見せる為で実際はアリアではなくアリアの中にいた別のアリアではない“アリア”の仕業だったと言う事だった。
『もしも、だ。アリアの記憶障害、ってのだったらどうする?それかさ、二重人格ってのもだったら?』
『えっ?うーん…ありえなくはない、のかな……。二重人格…記憶障害、かぁ……。あ、それって坊ちゃん本とかで読んだこと無かったですかね?』
「本……ああ、読んだというより、学んだ、が正しいがな。…何かの影響で記憶を無くす…自分で閉じ込めていた何かでもう一つの人格が現れる……。実際、見たことは無いがある事は知っている。」
『なら、可能性は無くはないな。まあ、これを踏まえた上で僕はアリアを見守っていく。無理になったら、ジューダス。お前に任せたからな。』
それは、今回みたいなことがあった場合を指し示している。
ジューダスは頷かず、静かに目を伏せ、了解と示した。
『…よし。そろそろお前は寝ろ。今のメンバーで一番、疲れているのはお前だろ…ジューダス。』
『あはは、坊ちゃん言われちゃってますねー。…あいたたっごめんなさっいたたっ。』
部屋を出て、こっそりとユリアラをアリアが眠るベッドのそばに置き、自分も部屋への道を歩いた。
外はまだ明るく、昼間だと知らせていた。
歩き、考えつかれていた皆は既に眠りに落ちていた。
ジューダスは空いたベッドに横たわり、そっと自分の過ちを思い出しながら、眠りについた。
彼の夢の中に、いるはずが無い人物が現れた事に知りはしなかった。