裏側
「率直に聞く。貴様は誰だ。」
「……。“アリア・エクリア”。」
『違う。』そう低く警戒するように言ったジューダスに“アリア”は、やはり、あの笑みを見せた。
我慢出来なかったのか、シャルティエが『ユリアラ!ユリアラは!?』と声を出し、ユリアラの存在を探した。
しかし、反応は無くシャルティエは慌てふためき始めるが、ジューダスが落ち着かせ、また“アリア”に向き直る。
見た目に変化は無い、背にはユリアラを抱えているが例の布によって被らされているのだろう反応が無くシャルティエの言葉に答えなかった。
ただ一つ違うのが表情だけだった。
眉を下げたような、優しさと幼さのあった表情ではなく、歳相応ながらの、そして企むような読めない表情をしている。
ジューダスと“アリア”が居るのは城から出て公園のある場所とはまた別の、ひっそりとした場所だった。
「お前は、アリアではない。違う奴だ。」
「……そう言うなら、構わない。だけど、私は私。…人ではない、バケモノな、私。私も、アリアも、バケモノ。」
「…違う、バケモノではない。ちゃんと、人だ。」
ジューダスは首を振り、違うと否定するが“アリア”は笑みを浮かべたままそうであると肯定し続ける。
それに嫌気が差したジューダスはレイピアを引き抜き、“アリア”に向けた。
『坊ちゃん!』と止めるシャルティエにジューダスは冷たい眼差しで“アリア”を見遣っていた。
「貴様…いい加減にしないと、斬るぞ…!」
「……いつか、分かる。分かるわ。私はバケモノ。私は私。」
「……っ」
質問の答えにならない事や、意味の分からない答えに斬りつけ、口を割らせたいが“アリア”の姿にそれができなくなっていた。
それは何故かなど本人にわかるはずもなく、奥歯を噛み締め、そしてレイピアをおさめた。
“アリア”に背を向けて城の部屋に帰ると言えば、“アリア”はジューダスを呼び止めた。
話す事はないと言うように背中を向けたままのジューダスに、以前のような様子でアリアが話し出した。
「あ、あの…ジューダス…!…、私…あの……。」
「…!?アリア…?」
「あの、あの……分からない、けど…私は……ジューダス、好き、ですよ…!…私は…皆と、一緒が…っあの……。」
混乱したように話し出すアリアにジューダスは駆け寄り表情をしっかりと見てそっと肩に手を置き落ち着かせた。
表情は以前のように、幼い顔をしている。
身振り手振りで何がしたいのか分からないが、何かを伝えたくて必死のアリアに、ジューダスは少し気持ちが安らぐのを感じていた。
頭を撫でてやり、とりあえずは休むようにと言えばアリアは必死に頷き、二人は城へと帰った。