あなたの為に | ナノ
中に眠る




あのあと、数日後にリアラとカイルはナナリーと共にホープタウンへ帰って来た。

その後、一晩休んでからトラッシュマウンテンを通って聖地カルビオラへ向かう事になった。

ジューダスはアリアの様子が気になっており、トラッシュマウンテンでは周りを気にしながらもアリアの事を考えていた。

様子が変わったように明るくなり、何より話す時は明るく楽しく会話に参加したりしていて、ジューダスからすれば不思議で違和感で、仕方なかった。

何より、ユリアラと会話する場面が少なくなっていたのにも驚き、変わり様に不信感さえ感じ始めているジューダスには誰一人気づかない。

勿論、それはシャルティエも同様に不信感を抱き、アリアの姿にも違和感と警戒をしていた。


そして、聖地カルビオラの中に入り目的の場所にたどり着く。

そこは隔離されたように広く、人も居なければ人が立ち入らない雰囲気を醸し出していた。

『ラグナ遺跡で見たヤツと同じくらい大きいや!』と騒ぐカイルに対して落ち着き払い目の前のものをじっと見据えるリアラとこれて満足じゃないかと言うナナリーと、やはりこの場に来て突然黙り込みぼんやりとし始めたアリアに微かながら、ジューダスは腰に備えているレイピアに手を掛けていた。

そんな様子など気づきもしない周りのみんなは話がどんどん進み、リアラの問い掛けに突然目の前に光が集まりだした。

半透明ではあるが、確かにそこにはリアラの言うフォルトゥナが現れ『よく来ましたね、我が聖女よ…。』と優しく、しかし何処かに諦めを感じたような声音で囁いた。


突然現れたフォルトゥナにカイルは驚きと好奇心で一杯になっているようで、じっとフォルトゥナを見詰めていた。

リアラの言葉にナナリーも驚きを隠せないようで一歩前にいるリアラに問い掛けた。

皆が皆、驚いておりその中でもやはり違和感を感じさせていたのはアリアだけだった。


その様子を気にすることなく、と言うよりも分かっているかのようにただリアラを見詰めて何かを与えてやるのがあたりまえのようにフォルトゥナは言葉を紡いだ。



「ここに来た理由は、分かっています。私の力で、あなたの願いを叶えましょう。」



『ですが、その前に一つ聞いておかなければなりません。』とリアラが話出す前にフォルトゥナは言い、リアラは落ち着きながらも聞きたくないような返事をした。

少しの沈黙の後にフォルトゥナは、ゆったりと、優しくしかし諦めを感じさせるような声音で話し始めた。



「エルレインはすでに己がすべきことを見定めています。そして、その為に動き…多くの人々の信頼を、得ています。」


「…それは、そうかもしれません。でも…!」


「わかっています。あなたが、エルレインとは異なる道を歩んでいるということは…二人の聖女、ふたつの道…。それは、あなたとエルレインに私が与えた運命です。」



フォルトゥナの言葉にリアラの表情は強張っているようで、やはり焦っているようにも見受けられた。



「ですが、道は違えど、想いは同じのはず。リアラ、私たちの目的…ゆめゆめ忘れぬように。」



フォルトゥナの言葉を聞いたあと微かながらに頷き小さくリアラは返事を返した。

しかし、そこで話が終わるかと思えばカイルが止めに入るように話に加わってきた。



「二人の聖女だの、人々を導けだの…いったい、なんのこと!?」



唯一、あまり状況を理解できていないカイルにリアラは俯き言葉を濁した。


そこに“アリア”がまるでリアラを責め立てるような言葉を放った。




「悩んでるなんて、まるで人みたい…だね…。」


「…っ!?」



微かに口元に弧を描くような笑みを浮かべた“アリア”に周りの空気は一変した。

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