あなたの為に | ナノ
知るも無知




「お前は簡単に愛せと言うが、僕にはそんな感情も経験も持ち合わせていない。それに、僕なんかが誰かを愛する資格なんて…。」



『別にお前の事情があるからとかで聞いてねえ。これは僕が勝手にあんたに頼んでるんだ。嫌ならロニとかカイルのやつに頼むぜ?まあ、僕と話せるお前でなきゃ意味がないからお前に拒否権なんて存在しないんだけど。』




愛してやれと言われてはいそうですかと言えるわけのないジューダスはユリアラにそう言えば拒否することを許されなくなってしまった。

だが、ユリアラの言葉も一理あるわけで、ジューダスは何も言わないで押し黙っていればまたユリアラが話し出した。




『体の関係とか恋愛感情じゃなくて構わない。家族っていうやつの愛情を与えてやってくれ。そばで見守って、守って、助けて、たまには慰めてやってくれ。こいつは、それを知らないから…。』


「…まるで赤ん坊みたいだな。捨て子だった、というわけでは無さそうだが。」




何も知らない、興味本位といけないことをしてしまったり自分に都合が悪くなったりしたら泣いて許してもらおうとする赤ちゃんのような説明をするユリアラは『…赤ん坊、なんだよ。』とジューダスの言葉に対して一番知りたがっている事を言った。

本気で言ったわけではなかったジューダスもそれには驚き、押し黙っていたシャルティエまでもが『え、え!?』と驚きを隠せずにはいられずに声を発していた。

眠っていたアリアは少し呻いた声を出してからまた穏やかに眠りだしたのを確認したようにユリアラは言葉を続ける。



『僕にはよくわからない。だけど、アリア自身がそう言っていたんだよ。“まだ一年しか生きていない”ってさ。驚きだよな、まるで化け物だ。だけど、…アリアにとっての化物は、世の中で自分に対しての脅威だよな、きっと。』


『で、でも1歳ってことは…まだよちよち歩きの赤ちゃんじゃない。…精神年齢?錯覚?まさかマインドコントロール!?もしかして、エルレインが彼女にそう言うように暗示を掛けたりとかああああごめんなさい坊ちゃん痛いですもう喋りませんからいたたたたた…!!』



自分の中にある推測を話し出したシャルティエにジューダスはコアクリスタルを叩いたり地面に落として踏んづけようとしたがシャルティエは謝ってなんとか許してもらい部屋には静寂が訪れる。

シャルティエのため息とアリアの寝息しか聞こえない空間はジューダスにとっては居心地悪いと言うわけでもなくただ気まずいという感じはしていた。



『まあ、とにかく。このこととかさ、他の奴に言うのだけは勘弁してくれ。それと…どんな事あっても、信じてやってくれよな。またエルレインのやつに操られる可能性があるから…逃れられない、から。』


『え…、どういう?』


「…城でのことか。」



思い出すように言えばユリアラは『ああ。』と頷くように声を漏らした。

突然エルレインが現れてアリアを連れ去ったかと思えば交換条件だと言うようにウッドロウの前に差し出し、ついには自分達と戦わされる羽目になってしまっていた。

アリアの瞳には光が無く、本当に操られているのだと分かった。


ユリアラはどうしてそうなってしまったかなんて分かっていたし、そばにいたから分かっている。

だがそこまでをジューダスに言うつもりはなく黙り込んだあと『ともかく、頼んだからな。』と言ってコアクリスタルを閉じてしまい、ジューダスは聞きたいことを聞き出せなくなってしまった。



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