異常通常
そっと、アリアに近づいて名前を呼んでやれば少し体がビクついたあとゆっくりとジューダスを瞳に写したアリアに言葉を続けた。
「アリア、何に怯えているんだ?僕はお前をどうしたいなど考えてなどいない。」
「……私、ね…死んでる、…だって。……言って、た。」
今日一日でアリアは感情がめまぐるしく変わっており、ジューダスはまた叫び泣かれるんじゃないかと覚悟をしていたがそんな事はなくて安心してアリアの言葉に耳を傾けた。
アリアは確かに死んだんだとエルレインは言っていたが、それは本当かはジューダス自身には分からない。
しかし、今目の前で怯えている姿は年相応とは思えない怯え様に確実にエルレインの言葉を信じ切っていて小さな子供のようだった。
『おい、ジューダスさんよ。僕をアリアのそばに置いてくれ。あいつは不安なんだよ。』
『一番身近な人がそばにいるのは大事ですからね、僕もそうした方がいいと思いますよ、坊ちゃん。』
シャルティエの言葉にジューダスは少し戸惑いながらもアリアにユリアラを渡せばユリアラのコアクリスタルを見詰めて安心しきった表情を浮かべていた。
短い期間でどれだけお互いが大事なのかが一目で分かる。
それに少なからず黒い感情がジューダスの中で渦巻いてすぐに消えた為に本人は気付いていない。
ユリアラとアリアは何か会話をしていた後アリアの表情が和らいで小さく微笑んでからジューダスに顔を向けて小さい声で謝罪の言葉を発した。
「何故謝る?僕は何もしていない。」
「あ、あの…迷惑かけちゃったから、それに…ジューダスは、私の事嫌いみたいですから…。」
『…は?』と声に出しそうな表情をしているジューダスにアリアは首を傾げさせて疑問を抱いているようでジロリとユリアラに目を向けるが、何も答えないのを見て犯人はユリアラで間違いないみたいだったが、ジューダスは溜息をついただけで何も言わないでアリアに向き直って『嫌いでもないが。』と言えば表情を和らげてアリアはジューダスを見つめた。
いたたまれなくなったのか、ジューダスはアリアに背を向けていれば気配で近づいてくるのが分かって制止しようとした時に『ジューダス…?』と言いながらジューダスの肩から顔を出すようにしながら覗き込んできたアリアにジューダスは少なからず驚き固まってしまった。
数日前まではどうしても触れ難い状況だった為に今が多少の平和な限られた時間だと思うとジューダス自身は穏やかでしかし慣れないようなくすぐったい感覚になった。
「あ、あの…ジューダス、さん?」
「さん、は付けなくて良い。…普通に呼べ。」
「ジューダス…?」
小さな子供のようなアリアにジューダスは少し違和感を感じながらも『そうだ。』と言いながら何となく、不意に頭を撫でてやっていた。
自分の行動に驚きながらも嬉しそうなアリアの表情に少なからずジューダスは癒されるような気持ちになってアリアを見詰めていた。