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恐怖心







「やだっ…いやぁ…!」


「大丈夫だよアリア!あたしらは何もしないから!」



暴れだすアリアに懸命に落ち着かせようと必死に言い聞かせるナナリーだったが、逆効果のようでまるで子供のように喚き出した。

アリアが目覚めてから一時間近く続くこの光景に子供たちの子守りを頼まれた二人のうち一人は逃げ出して今見守っている位置にいる。

自分も止めるべきかもしれないがつい先程止めることに協力したら逆に泣き喚いてしまった。

結果喚くだけになったアリアはマシなように見えるがやはり何かに怯えているようで怖がっているようで、彼は、ジューダスは何も出来ない歯痒さから拳を握りしめていた。


二人はナナリーの家に招かれて眠っていた人物は誰かと部屋を少し覗かせてもらった時にすやすやと眠っているアリアを見て驚きはしたが、安心してホッとしてゆっくりと体を休めていた。

その次の日にふと早めに目が覚めてしまったジューダスは一旦外に出て朝日を見ていたらアリアが目を覚ましていたのに気づいて話しかけたら、目を見開いて驚きはしていたがすぐに笑顔を見せた。

しかし、そこまではよかったが部屋に戻り朝昼と過ごしていたらアリアが部屋から出て来なくなってしまった為に、ナナリーが部屋に入り宥めようとしたジューダスでさえも遠ざける、ということが今現在であった。

一旦外に出て、ナナリーに任せることにしたジューダスは子守をして大忙しのロニを眺めて時間を潰そうかと考えていた時に自身の腰より後ろ辺りに隠すようにある剣、シャルティエがジューダスに話し掛けた。



『坊ちゃん…アリアは、大丈夫なんでしょうか…。』


「分からない…あいつは、一体どうしたのか…僕には、」


『…アリアは、怖いんじゃないんですか?』



『分からない。』そう言おうとしたジューダスにシャルティエは遮るのが申し訳なく思いながらも言葉を発した。

シャルティエの言葉を聞いてジューダスは人が変わったように喚くアリアを思い出し、エルレインに連れて行かれた時の言葉を思い出した。

アリアは確かに“死んだ”と言っていた。

なら、どうして彼女はカイル達と居たのか、カイル達と居たならばソーディアンのユリアラに出会うこともなかっただろう。

そこでジューダスはユリアラの存在を思い出してナナリーが遠くの街に行くと言ってつい先ほど出て行った事を好都合に思い外から中に入りユリアラがどこにいるか探したらシャルティエが『あっちみたいです坊ちゃん。』とアリアが篭っている部屋の隣の物置らしきところにあると伝えてきて、中を見渡すように見れば微かにコアクリスタルを光らせるソーディアンを見つけて手にとって被せられていた布を外す。


『ぶは!』とまるで人間みたく言ったユリアラに対してシャルティエは声をかけた。



『ユリアラ!どうしてここに?っていうかなんでアリアを止めなかったの?』


『あー、待て待てシャルティエ…元はといえばその布がいけないんだよ。』



ジューダスが持っていた布を指すように言ったユリアラはシャルティエはどういうことかと思ってジューダスに頼んで被せてもらったら機能停止したように何も言わなくなった。



「…シャル?おいシャル!」


『外してあげろ。そうすれば喋れるようになる。』



ユリアラの言葉にジューダスは布を外してやればシャルティエもユリアラの時みたいに『ぷはっ!坊ちゃーん!』と涙声で叫んだ。

そんなシャルティエにユリアラは笑ってから思い出したようにアリアのことを聞けばすぐに連れて行って欲しいとのことで、アリアの部屋の前に立って、意を決してノックをする。



「…入るぞ。」



言葉をかけて入れば完全に怯え切っているアリアの姿がそこにあって、ジューダスは知らずのうちに顔を顰めてそのまま近づいていく。

先程のように怯えて泣き喚くことは無かったが、警戒だけはしていた。


アリアの瞳にはジューダスは写っておらず、遙か向こうを見ているようで彼に怯えているというより何かに怯えてあるようだった。



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