虚ろな瞳
攻撃を受け止めたカイルに対して少し楽しくなったと思ったバルバトスだったが、そばに隠れるようにしていたエルレインを視界に捉えるとつまらなさそうにして斧を降ろして自分の役目は終えたとばかりにすぐさまカイルから離れ、消えていった。
それと同時にリアラはウッドロウの元へ行きケガを治すがかろうじて息のあるウッドロウの目線は隠れるエルレイン達に向けていた為、答えてやろうといいたげにスッ、と音も無く影から出てきた。
そちらの方にみんなが目を向けるとジューダス以外は驚いた顔をしておりエルレインとアリアの名前をカイルは叫んだ。
アリアは虚ろな瞳でただ何かを見ているわけでもなく空を見ているアリアに何度も呼びかけるカイルがおかしかったのか、エルレインは小さく笑いながらそのままアリアに何かを告げるように耳元で囁いた途端に一歩前に出てきて最初に出会った剣、ソーディアンユリアラを構えた。
「…アリア?」
「っ!カイル!離れろ!」
アリアに近づこうとしたカイルをロニが抱えるようにして離れると同時にアリアはユリアラを振りかざして斬りかかってきた。
驚くカイルを離す事なく何かあったのかを察したロニとジューダスはそれぞれ武器を構え、アリアではなく後ろでほくそ笑むエルレインに向かっていた。
しかしそれでも笑みを絶やさないエルレインに最初に斬りつけたのはカイルだった。
エルレインはその攻撃が分かっていたかのように受け止めてすぐに弾き返す。
「ふふふ…お前たちは何も分かっていない。」
「アリアを返せ!エルレイン!」
エルレインの言葉など聞いていないようでカイルは尚もエルレインに斬りかかるがすべて弾き返されてしまう。
いまだに微笑むエルレインに諦めないカイルはついには肩で息をして攻撃することが辛くなってきたときにエルレインはゆっくりとアリアのそばに行き耳元で言葉を発した。
その言葉はまるでわざと皆に言い聞かせるかのように。
「アリアよ。あいつらの相手をしてやれ。」
「…。」
エルレインの言葉を聞いたアリアは頷くこともしないでそのまま一歩前に出てただじっとなにも写さない瞳でカイル達を見詰めていた。
その瞳はなにも写さずに、虚ろに空を写し、カイル達を写していた。