ゆきのべんち
ウッドロウ王の元へ向かったカイル達とは違い一人公園みたくに開けた場所のベンチに腰掛けて何もするわけでもなくただ目の前で遊ぶ子供達をジューダスは、一人眺めていた。
『坊ちゃん、懐かしんでます?』
「……いや、そんな事を考える暇はないだろう…。」
自分の背中に隠すようにあった剣を少し前に出して問いに答えた。
今考えるべきはカイルのことと、アリアのことをジューダスは考えていた。
それに対して剣は『そういえば、持ってましたね。』と言ってまるで嬉しそうに話し出した。
『実はユリアラとは仲が良かったんですよ、僕。』
「ほう…それは意外だな、上司達とはあまり話さなかったお前が。」
『あれは最初だけですよ!…にしても、どうしてアリアが…。』
最初は楽しく会話をしているつもりだったが、本人達はそういうつもりはなく、アリアの話をし始めた。
剣とは無縁の子が持ち歩いており、しかも彼女をマスターだと認めている。
自分達からすれば関係はない、しかし今ソーディアンがあることが不思議で仕方なかった。
もうソーディアンは全て無くなったとばかり思っていたジューダスは、最初の頃を思い出す。
森で拾われたというソーディアン、偶然現れたアリアのマスターになった。
なんら不思議ではない、しかし不思議なのはどうして剣も持たないアリアなのかが不思議だった。
そして突然話せなくなったというもの。何かが関係しているんだと思う。
それが何かさえわかれば、アリアを信じられると、思うから。
かと言ってそれですぐに信じられるかは分からない。
解放された途端に自分達を襲いかねないからだ。
『あまり、深く考えないようにしましょう坊ちゃん。ユリアラにも黙ってもらっていますし。』
「…そうだな。いざという時にはあいつが何とかするだろう。」
『だと、いいですね。』
ジューダスは曇っている空を見上げ、降って来る雪に手を差し延べた。
手の平に舞い落ちた雪はジューダスの手の体温で溶けてしまい、水滴となった。
「…僕は、生きているんだな。」
『当然ですよ!坊ちゃんはちゃんと、生きています!』
「…僕は、生きている。」
何かを確かめるように言うジューダスにシャルティエ、彼のソーディアンは嬉しい気持ちになりながら『はい!』と元気よく返事するように答えた。